「Cの向き」は“どこまで”答えるべき?意外と知らない、視力検査の正しいやり方【眼科専門医が解説】

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「Cの向き」は“どこまで”答えるべき?意外と知らない、視力検査の正しいやり方【眼科専門医が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

視力検査にまつわる疑問を解消しつつ、視力検査の正しいやり方を見ていきましょう。メディアでお馴染みの眼科専門医・平松類医師が解説します。

視力検査は「C」はどこまで答えるべき?

視力検査で「〇の切れているほうを答えてください」と言われて、たとえば見えたのが「C」だったら「右」と答える…。この「C」の形は、正式には「ランドルト環」といいます。

 

視力検査でランドルト環を見たとき、切れ目が右なのか上なのかなど、はっきりしない場合はないでしょうか? このとき「どう答えるのが正解なのか?」「それとも、答えないほうがいいのか?」と悩んだり、何となくこっちかな…と思いつつも「答えるべきか、答えないほうがいいのか」「適当に言っても、もし当たったら“視力がよい”という結果になってしまうんじゃないか?」と疑問に思ったり、「視力検査では“よい”と言われているけれども、私自身は見えにくいんです」といった声をよく聞きます。

 

そこで本稿では、そもそも視力検査とはどういうもので、何をしているのか?を解説しつつ、上記の疑問にお答えしたいと思います。

「見えても曖昧なとき」の答え方

まず、右っぽいけど違う気がするなど「見えても曖昧なとき」は、どう答えるとよいのでしょうか?正解は、何となくでもいいので答えてください、です。

 

視力検査は、2点弁別閾(にてんべんべついき)といって、あなたが〇の空いている場所を判別できるかどうかを見ています。何となくだから答える/答えないというのをあなたがコントロールしてしまうと、正確ではなくなります。まったく分からないときは答えなくていいですが、何となくわかるときは答えていただければと思います。

「何となく」で正解しても、検査結果はほぼ変わらない

でも「何となくわかる」で答えたら、視力がすごくよいという結果が出てしまうのではないか?という疑問がわくでしょう。

 

視力検査は、正式には同じ段の指標が3つ正しく判別できた場合に、1.0だったり0.9だったりというのを判別できます。適当に答えて1回正答する確率は1/4です(ランドルト環の切れ目は上下左右と4パターンあるので、4つあるうちの1つ=1/4)。同じ段の指標を3つすべて正しく判別できれば、視力は0.1高くなります。しかし3回正答する確率は1/4×1/4×1/4=1/64、つまり1.6%の確率です。非常に低い確率であるため、この方法を採用しています。視力0.9の人が3回正当しても1.0になる程度です。視力0.8の人が1.0という結果を出せるのは1/4096、つまり0.02%の確率となります。

 

とはいえ、正確には100%に合わせるべきでは?と思うかもしれません。確かにそうなのですが、視力検査自体は自覚検査といって、あくまで患者さんが正しく答えてくれることを前提とした検査なので、曖昧さが残ってしまいます。

 

たとえば認知症があったり子供で集中力がなかったりすると、視力が下がってしまいます。徹夜明けで眠いなどの要因で視力が下がる人もいます。そのため、視力のような自覚的な検査と、眼科医が目を診たり、検査者が空気を使って目の圧力を測ったりなどの他覚検査をおりまぜて検査を進めていくこととなります。

視力検査で「顔を近づける、目を細める」がNGなワケ

上記以外にも、視力検査ではよく「顔を近づけないで下さい」「目を細めないでください」と言われると思います。何となくダメなのはわかると思いますが、なぜいけないのかを具体的に見ていきましょう。

 

視力検査というのは、ランドルト環がどのぐらいの大きさまで判別できるかということから視力を判別します。0.1と1.0では指標の大きさが違います。もう一つ重要なものとして「距離」が挙げられます。

 

基本となる視力検査は、「5メートルの距離をとって見る大きさ」となります。たとえば視力1.0の指標は〇の直径が7.27mm、切れ目の幅は1.45mmとなります。そしてここで重要なのは距離です。5メートル離れて見るべき指標を4メートルの距離で見てしまえば、それはもう、「これが見えたら視力1.0」とかの“指標の意味”がなくなってしまうのです。顔を近づけると検査距離がずれて視力が不正確になり、通常よりよい視力が出てしまいます。だから「顔を近づけないでください」と注意しているのです。

 

もう一つ、目を細めるのはなぜダメなのでしょうか? 目を細めることで矯正視力(=メガネをかけたときの視力)が上がるわけではありません。しかし裸眼視力は目を細めると上がります。

 

目を細めると、小さな穴から覗いたときと似たような現象が起きます。100円ショップなどで、小さな穴がたくさん開いたメガネを見かけたことはないでしょうか? そのメガネを使うとよく見える、という道具です。また、テレホンカード穴を目に当てるとよく見える、という話も聞いたことがあるでしょう(今の時代はテレホンカードを知らない人もいるかもしれませんが)。

 

これらはピンホール効果といって、小さな穴から覗き込むことでピントの合う範囲が広くなるという現象です。視力検査で目を細めると同様の現象が起こり、近視や遠視・乱視の度数が不正確になってしまいます。だから目を細めないでほしいと言うのです。

 

顔を近づけないのは視力を高く出しすぎないため、目を細めないのは度数を正確に測るためという目的があります。しかし、人間は「よく見よう」と思うと、ついこの2つをやってしまうものなのです。

「覗き込む視力検査」だと視力が変わる理由

ほかにも簡易的な検査として、顔を機械にくっつけて、モニターのようなものを見て視力を測る検査があります。この検査では疑似的に距離と大きさを指標として出しています。そのため、人によってはいつもより視力がよくなったり、いつもより悪くなったりすることがあります。

 

この検査方法は、特に場所が取れない健康診断などで行われることがあります。そのため健康診断での視力検査は、大きな病気がないかどうかの概算として診ているものとして理解し、検査を受けていただければと思います。

視力1.0なのに見にくいのはなぜ?

また、視力は1.0と言われているけれども見にくい、ということがあります。視力がいいのに見にくいというのは、どういうことでしょうか? 実は視力検査というのは、あくまで「C」が判別できるかどうかを見ているだけであって、「見える能力」全体を見ているわけではありません。患者さんとしてはついつい、視力=見える能力全体と思いがちです。しかし、視野が欠けていて失明寸前だけれども視力1.2でよく見えるという人もいます。また、目に傷がついてまぶしくて文字も読めないし、自分で歩くのもつらいのだけど、視力は1.0と出るということもあるものなのです。

 

患者さん側としては、見えないことを「視力が出なくなりました」といいがちです。そこで医者はつい、正確な医学用語にこだわって「視力は出ています」と返し、会話が平行線をたどることがあります。あくまで「視力」というのは「見えているか否か」とイコールではないということを、理解していただいたほうがよいかと思います。

 

 

平松 類

眼科専門医・医学博士

二本松眼科病院 副院長

 

※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。