節税効果は実はない?
次に、企業版ふるさと納税の節税効果について、個人向けのふるさと納税との比較で解説します。
まず、個人向けふるさと納税の場合、「節税」という言葉を「何もしない場合と比べて収支がプラスになること」と広く定義すれば、以下の2つのメリットがあります(詳しくは「『ふるさと納税』結局いくら節税できる?問題点とともに解説」をご覧ください)。
・2,000円の自己負担でほしいもの(返礼品)が手に入る
・「返礼品の市場価格-2,000円」の額だけ得をする
しかし、企業版ふるさと納税の場合、これらに相当するメリットがないのです。どういうことか説明します。
まず、企業版ふるさと納税では、寄付金の全額損金算入により、法人税相当額の支払いを免れます。たとえば、寄付額1,000万円で法人実効税率30%として計算すると、300万円の税負担を免れることになります。
次に、税額控除として、地方自治体に寄付した額のうち最大で60%が返ってきます。寄付額1,000万円だとすると、600万円が返ってくるということです。
単純にお金の収支だけをみると、このケースでは、何もしなかった場合と比べ、1,000万円を寄付して900万円が返ってくるのと同様ですので、100万円が「自己負担」ということになります。
すなわち、企業版ふるさと納税を行う場合の収支は、寄付額の約10%の「マイナス」ということになるのです。
この点、個人版ふるさと納税であれば、2,000円の自己負担額の見返りに返礼品を受け取ることができます。ところが、企業版ふるさと納税では、上述の通り、返礼品を受け取ることはできません。
それでは、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
企業版ふるさと納税の真のメリットとは?
企業版ふるさと納税のメリットは、以下の通りです。
・社名が自治体のHP等で公表される
・地域貢献を行っていることのPRになる
・自治体とのパートナーシップ構築のきっかけになる
いずれも、直ちに金額で評価することができない無形的なものといわざるをえません。しかし、これらは、企業の大幅なイメージアップになると同時に、寄付先の自治体との緊密な関係を構築することにもつながり、将来の事業展開にもプラスの影響を及ぼす可能性があるものです。
そのようにとらえると、自己負担額の約10%はある意味「広告宣伝費」の代わり、あるいはコストパフォーマンスの高い先行投資であるともいえます。
企業版ふるさと納税を活用する場合は、得られるメリットがこのような無形のものであることを十分に理解したうえで活用する必要があります。
どの自治体にどのような寄付をいくら行うのかを検討するには、「企業版ふるさと納税ポータルサイト」が便利ですので、参考にしてください。
\1月10日(土)-12日(月)限定配信/
税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
カメハメハ倶楽部セミナー・イベント
【1/7開催】
高市政権、トランプ2.0、日銀政策、AIバブル…
2026年「日本経済と株式市場」の展望
【1/8開催】地主の資産防衛戦略
「収益は地主本人に」「土地は子へ」渡す仕組み…
権利の異なる2つの受益権をもつ「受益権複層化信託」の活用術
【1/8開催】
金融資産1億円以上の方のための
「本来あるべき資産運用」
【1/10-12開催】
「タックスヘイブン」を使って
節税・秘匿性確保はできるのか?
「海外法人」の設立法・活用法
【1/10-12開催】
遺言はどう書く?どう読む?
弁護士が解説する「遺言」セミナー<実務編>
