富の象徴であるタワマン。高さ60m、20階以上のマンションの総称ですが、その購入者は長らく富裕層とされてきました。しかし昨今は、夫婦ともに高所得というパワーカップルがメインターゲットだといいます。さらに購入したタワマンも、築浅のうちに売却してしまうケースも珍しくないのだとか。みていきましょう。
世帯年収2,000万円超のパワーカップル…「都心のタワマンを1億円で購入」もすぐに売却を決めたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

パワーカップル…せっかく購入したタワマンを手放すワケ

パワーカップルがタワマンを売却する理由。経済的な理由のほかに、何があるのでしょうか。単純に価格上昇により、「いまのうちに売っておこう」という思惑が働いたケースもあるでしょう。希少なロケーションのタワマンであれば、昨今の不動産価格上昇により、中古であっても新築時よりも大きく売却益が見込めるケースは珍しくありません。不動産価格、天井知らずとはいかないでしょうから、「今が売り時」と判断したのでしょう。

 

昨今の金利上昇懸念を心配して、売却を決断するケースも。先ほどの1億円で購入した都心のタワマン。金利が1%から3%に上がったとしたらどうなるのでしょうか。返済総額は1億5,177万7,166円で、月々の支払いは42万1,604円。1ヵ月のローン負担は10万円近くも高くなります。パワーカップルであっても、住宅ローンの返済が長期に渡る場合、金利のわずかな上昇も大打撃。金利上昇圧力が強まるなか、万が一を見据えて売却を決めてしまうのです。

 

さらにタワマン、そのものに内包する問題を心配して、「長く住むものではない」と判断するケースも多いとか。その問題とは「大規模修繕費不足」。新宿区『タワーマンション実態調査報告書』では、過半数のタワマンで「修繕積立金が足りていない」という実態が明らかになり、その対応として6割のタワマンで「修繕積立金の値上げ」を実施しています。その値上げ幅は、「20%以下」が27.3%、「21~50%」「50%以上」が36.4%。大幅な修繕積立金の値上げは、珍しくありません。

 

タワマンの歴史は一般的なマンションに比べて歴史が浅く、数も多くはありません。そのため大規模修繕の方法は確立されておらず、物件ごとのオーダーメイド、というのが現実。自ずと積立金も高くなりますし、計画通りの修繕とならないケースも多いのです。

 

そこにきて、昨今の資材価格の高騰に、円安まで加わるという緊急事態。あまりに予想不可能なことから「タワマン・クライシス」というワードまで飛びかっています。余裕のある富裕層であれば、ある程度のことも対応できるでしょうが、夫婦ともに高給取りとはいうものの、一般層であるパワーカップルにとっては大きな不安な種。大規模修繕を前に売却を決断するケースが後を絶たないのです。

 

万が一を見据えて、タワマンを売却するパワーカップル。ほとんどの場合、収支はプラスだといいますから、賢い選択であったことは確かなようです。