毎月10万円を取り崩す「余裕の老後」の顛末
せっかく頑張って働いてきたあとの老後生活。できれば、ゆとりのある生活をしたい……そう願う人は多いでしょう。公益財団法人生命保険文化センターの調査によると、老夫婦二人が余裕のある暮らしをするために必要な費用は平均月37.9万円。年金月28万円を受給し、平均的な貯蓄額の共働き夫婦であれば、よゆうのある暮らしのために月10万円ほどを取り崩していく計算。16年強は、夫婦で「ゆとりある老後」を送れる計算です。
このようなシミュレーションはさまざまにされていますが、ただこれで最期までまっとうできるか、といえばそうではありません。基本的にこれらは「死ぬまで健康でいること」が条件。年を重ねるごとに増えていく医療費、そして介護が必要になったときの介護費などは含まれていません。要介護認定者は加齢と共に急速に高まり、80~84歳では26.4%、85歳以上では59.8%となります。
前述の例だと、悠々自適な生活をしてきた老夫婦も80歳を超えたあたりには貯蓄が底をつき、年金だけの生活となります。生活費は年を重ねるごとに安くなっていくので、「80代であれば年金だけで生活できるだろう」と考えられなくもないですが、そこに介護問題が大きく立ちはだかるわけです。
公益財団法人生活保険文化センター『2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査』によると、平均介護費用は月4万8,000円でした。「最期まで自宅で」と願っても、在宅での介護が難しくなってきたら、施設介護が視野に入ってきます。同調査によると、施設介護の場合、平均月12万2,000円で、「15万円以上」が最も多く30.7%でした。
老人ホームのサービスはピンキリ。悠々自適に暮らしてきた老夫婦であれば、平均的な費用の施設では満足できない可能性が高く、そうなると最も多い「15万円以上」の施設が、希望に合う施設となるでしょう。しかし夫婦ともに入居となると、毎月赤字になる計算。悠々自適な生活のあとでは貯蓄もなく、希望を下げなければ入居できる施設がないという惨めな結果に。つまり最期まで健康でいられるというのは稀であると考え、介護が始まる前に自分たちにあった介護プランを立てることが重要なのです。
介護に関する悲劇的な物語は多いのが実情。介護破産を避けられるよう、しっかりとした計画を立ててから老後生活に臨むのが正解です。