公的年金が頼りとなる老後。そこで破産してしまう人のなかには、「昔は高給取りだったのに……」という人も珍しくありません。なぜ経済的に余裕がありながらも、破産を迎えてしまうのでしょうか。みていきましょう。
年収1,200万円超「50代・大企業の部長」はまだ知らない…定年後に直面する「老後破産」の危機 (※写真はイメージです/PIXTA)

なぜ高給取りサラリーマンでも「老後破産」に直面するのか?

ただ会社員の成功者ともいうべき、大企業の元部長でさえも、必ずしも老後は安泰とはいえません。

 

老後、破産という結末を迎えてしまう人は、大きく2つタイプがいます。ひとつは「低年金の人」。現役時代は低収入で、それゆえにもらえる年金額も少なく、生活苦にあえぐ人たちです。もうひとつが、「元・高給取りの会社員」。高給取りだったから当然、受け取れる年金も高額、それにも関わらず家計が火の車となり破産を迎えてしまう人たちです。

 

なぜそのようなことが起きてしまうのでしょうか。彼らは現役~引退後に超えなければいけない「2つの壁」を乗り越えることができなかったことが、老後破産の要因になっています。

 

ひとつめの壁が、定年時に直面する「収入減の壁」です。昨今は、60歳の定年後は再雇用となり、65歳くらいまで働ける会社が多くなっています。そのようななか、60歳の定年時に雇用形態が変わり、年収は2~3割ほど減少するのが一般的。定年まで役職定年がない場合は、定年の時点で給与が半分程度になることも。

 

さらに、現役を引退し年金受給が始まる際にも「収入減の壁」があります。年金定期便などでおおよその受給額を把握していても、いざ年金を受け取るときになると、「これしかもらえないのか……」と落胆するケースは多いです。

 

この2つの「収入減の壁」を前にするべきは、生活のダウンサイズ。将来得られる収入にふさわしいライフスタイルにしていくことが重要です。ただ算段が甘かったり、そもそも生活の見直しをしないケースが高給取りサラリーマンほど多いといいます。そして一度あげた生活水準はなかなか下げられない……というのがお決まりのパターン。あっという間に老後破産に陥ってしまうのです。

 

公益財団法人生命保険文化センターの調査によると、夫婦2人の老後の最低日常生活費は平均月23.2万円、ゆとりある老後生活費は平均月37.9万円。余裕のある暮らしをするなら、年金30万円を手にする、ほんの限られた人であっても、年金だけではゆとりある老後の実現は難しいのが現状です。その分、貯蓄が必要となりますが、総務省『家計調査』によると50代の平均貯蓄額は1,819万円、60代では2,023万円。月30万円を受け取る夫婦でも、貯蓄2,000万円でゆとりある老後を送っていれば、20年ほどで貯蓄は底を尽きてしまう計算です。

 

どれほど年金を受け取れるとしても、収入が限られる以上、貯蓄頼りのマネープランでは、将来的に破産するリスクは高まります。そうならないためにも、「収入減の壁」を前に、まずは年金だけで暮らす生活をイメージしてみることが重要です。