「退職金がない」のは違法ではないが…
企業規模で1,000万円近くの差が生じる退職金ですが、すべての企業に退職金給付制度があるわけではありません。そのような事実を入社後に知って「退職金がないなんて、ブラック企業だ!」と騒ぎ立てるケースも(もちろん、就業規則に記されているにも関わらず、退職金がもらえないなら、ブラック企業です)。ただ終身雇用制が崩壊したといわれる昨今、退職金事情も大きく変化しています。
「退職給付制度なし」とする企業はこの20年で倍増(東京都『中小企業の賃金・退職金事情』より。「退職給付制度なし」は、2002年は10.3%だった)。また退職金自体も、1990年代をピークに2~3割程度減っています。
また退職金は「月々の給与から将来のためのお金を企業が変わって積み立てて、定年時に給付するもの」という意味合いがあります。退職金1,000万円もらえるとすると、単純計算、毎月2万円を会社が積み立ててくれていた、というイメージです。
最近は前出の通り退職金制度のない会社が増えています。企業としては従業員の退職時にお金の心配をする必要がないので、資金力に不安のある中小企業なら、退職金制度がないほうがプラスに働く側面も。一方で、退職金なしは人材確保の面ではマイナスに働き、採用で苦戦する場合があります。そのため、退職金制度がない代わりに、毎月の給与を高く設定していたり、賞与でカバーしているケースも多くあります。
さらに退職金制度があっても、勤続年数が足りないと手にすることはできません。「なんとか退職金を手にしたい……」そんな思いから、転職したくても二の足を踏んで、チャンスを逃すことも。その点、退職金制度がないほうが、躊躇なく転職にトライできるでしょう。
このようにみていくと、退職金制度がないからといって、ブラック企業というのは早合点。退職金はなく、さらに給与も低く、労働時間も長く……そのような場合は、ブラック企業ということを疑ってもいいかもしれません。