男性65.5%、女性51.2%…「腫瘍マーカー」の意義は
その代表格が「腫瘍マーカー」だと思います。
「腫瘍マーカー」は人間ドックで頻用される検査であり、人間ドックを受ける際に腫瘍マーカーをオプションで追加する人は多いと思います。その理由としては「がんを早期発見したいから」だと思います。では実際のところ、腫瘍マーカーを調べることでがんを早期発見できるのでしょうか?
国立がん研究センターの統計によりますと、日本人が一生の間にがんと診断されるのは男性が65.5%、女性が51.2%とされ、がんで死亡する確率は男性が26.7%、女性が17.9%と報告されています。つまり2人に1人ががんと診断され、4~6人に1人ががんで死亡しているのが現状となります。
ちなみに部位別のがんの罹患数の順位(2019年)としては、男性では1位:前立腺がん、2位:大腸がん、3位:胃がん、4位:肺がん、5位:肝臓がんであり、女性では1位:乳がん、2位:大腸がん、3位:肺がん、4位:胃がん、5位:子宮がんとなっています。
こうしたデータから分かるように、健診や人間ドックでは、比較的発生頻度の高いがんを効率よく早期発見することが理想的となります。
まず、がんが診断されるまでの過程としては、画像検査(レントゲン、CT検査、胃カメラなど)でがんを疑った場合、さらなる精密検査でその部位の細胞を採取し、組織検査でがん細胞を認めたら確定診断となります。腫瘍マーカーそのものでは診断にはならないため、あくまでも補助的な検査となります。
また、一般的には「早期がんでは腫瘍マーカーはほとんど増加しない」と言われており、腫瘍マーカーをがんの早期発見目的として使用すること自体が誤りということになります。
さらに、腫瘍マーカーは「がん以外の要因でも上昇することが多い」のも、人間ドックで腫瘍マーカーを調べる場合の問題点となります。
代表的な腫瘍マーカーにCEAというものがありますが、例えば人間ドックでCEAが5.2 ng/ml(基準値は5.0以下)だったとします。もちろん基準値を超えているため、医療機関を受診することになります。患者さん自身は全く無症状だったとしても、がんが隠れている可能性があるため精密検査を進めていくことになります。
ちなみにCEAが増加する可能性のあるがんとしては、主に胃がん、大腸がん、膵臓がん、肺がんなどが挙げられるため、胃カメラ、大腸カメラ、CT検査などの検査が必要になります。ですが、それらのがん以外にも甲状腺がん、乳がん、子宮がん、卵巣がん、尿管がん、膀胱がんなどで上昇することもあるため、そうなると婦人科や泌尿器科への紹介となり、そこでも精密検査をすることになるかもしれません。
全身の精密検査をして何も異常がなかったとしても、
「画像検査で見えないような小さながんが隠れている可能性は否定できないため、定期的に血液検査でCEAをチェックしていきましょう」
ということになるわけです。