「欧米に比べて国民負担は少ない」は本当か?
このように少子高齢化に伴う国民負担増のニュースが流れると、どこからか聞こえてくるのが、「税金の高い欧米よりもまし」、さらには「税金の高い欧米に比べて、日本はまだまだ。さらに税率は上げられる」という声。
財務省が公表している、国民負担率(租税負担率+社会保障負担率)の国際比較によると、「日本」46.5%に対し、「アメリカ」は32.4%、「イギリス」46.5%、「ドイツ」54.9%、「スウェーデン」56.5%、「フランス」67.0%。確かに、諸外国と比べると、日本の国民負担は少ないといえるでしょう。
しかし日本の国民負担率が低いのは、公債の負担を将来に先送りしているから。このように潜在的な加味した負担率は、「日本」56.8%に対し、「米国」40.7%、「英国」49.6%、「ドイツ」54.9%、「スウェーデン」56.5%、「フランス」71.4%。欧米と肩を並べる負担となります。それで「高負担、高福祉」を実現しているなら納得感が得られますが、日本はもともと「低負担、中福祉」の国。高齢化で負担は重くなっていますが、質があがっているとは言い難く、反発が大きくなるのは仕方がありません。
また国民負担率は毎年財務省から発表されていますが、このニュースにも注意が必要です。
令4和年度の国民負担率を公表します
租税負担率と社会保障負担率を合計した国民負担率について、令和4年度の見通しを推計しましたので、公表します。
令和4年度の国民負担率は、46.5%となる見通しです。
令和2年度(実績):47.9%
令和3年度(実績見込み): 48.0%
令和4年度(見通し):46.5%
出所:財務省ホームページ
一見すると、負担が軽減されたようにみえるでしょう。しかし過去の発表で「前年の実績見込み」と「当年の見通し」を比較すると、たいてい「減少の見込み」となっているのが恒例で、最終的な実績としては2007年の37.2%以来、上昇の一途を辿っていることがわかります。これでは「負担減を装って……ふざけるな!」という声が上がるのも当然です。
増大する老後不安に対し、国としても何とかせねば、と考えているのは分かりますが、昨今の年金の改革案含め、どれも小手先だけのよう。結局は、毎回のように「議員の給与を減らせ」とか「税金の無駄を失くせ」などの声があがることになります。いっそのこと、「老後は自己責任。その分、国はこれから日本を背負う子どもにお金を使います」くらい開き直ってもらったほうが、納得が得られるかもしれません。