住宅ローン返済時は、経済環境の少しの変化で家計が崩壊してしまう「破綻予備軍」になりがち。そうならないためにも「収入を増やすこと」が重要です。本記事ではさまざまある「収入を増やす方法」のうち「投資」の有効性について考えていきます。
 住宅ローンで陥る「破綻予備軍」…優先すべき対応策は「投資」ではない理由【住宅専門FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

 住宅ローンの返済で陥る「破綻予備軍」

住宅を買うと、それまでの賃貸暮らしのときとは家計の収支が大きく変わってしまいます。住宅ローンの返済額は家賃よりも高くなることが一般的で、居住スペースが広くなる分、光熱費も上昇します。固定資産税や火災保険などの維持費も必要です。 そのうえ、子供の教育費や自動車ローンもあれば、毎月の生活感覚は非常にタイトなものになります。

 

住宅ローンを借りると、少しの経済環境の変化で家計が崩壊してしまう「破綻予備軍」になる傾向があります。 住宅を購入した世帯の感想としていうことのナンバーワンは、「貯蓄が出来なくなった・貯蓄できる額が少なくなった」です。

 

このままでは10年後に屋根と外壁の塗り替えをする費用も貯まらないのではないか、子供が大学進学は奨学金を借りてもらうことになるのではないか、ひいては老後の生活は年金頼みの貧しいものになるのではないかと不安になっている方が非常に多いのです。

お金の不安は「投資」ですべて解決できる?

家計への漠然とした不安のなかで、多くの方が思いつくのが「投資をしてお金を増やしたい」というものです。SNSなどで頻繁に投資の話題をみかけるので、家計の余裕を持つためには投資をすべきだと、さほどの計算もなく考えてしまうのかもしれません。

 

ハウスメーカーで紹介されたファイナンシャルプランナーに「投資をすれば家を買っても大丈夫です」などという言葉で変額保険や投資信託を勧誘され、厳しい家計をより厳しく追い込む世帯は最近増えています。 つみたてNISAやiDeCoへの関心も非常に高いのですが、投資に関する筆者の意見をはっきりと申し上げます。

 

「毎月わずかなお金をつみたてNISAやiDeCoに投じても、お金の不安が解決するほど劇的に資産は増えません」

 

つみたてNISAの年間の購入額の限度(非課税投資枠)は40万円、iDeCoは会社員の場合月23,000円です。年数にもよりますが、これだけを積み立てたところで十分な老後資金を形成するのは困難でしょう。これらは節税メリットを含めて、資産形成の手段の一部として取り入れるべきものです。

 

まして年間40万円も投資に回せる余裕などない家が地方都市ではほとんどです。仮に無理をして積立投資にお金を回したとしても、年利2~3%の自動車ローンを利用していたら、投資の意味がなくなります。そのような自転車操業の家計では投資をするだけでお金の問題が解決することは絶対にありません。

 

家計に余裕のない世帯がまず考えるべきことは、シンプルに「支出を減らす」ことです。その次に「収入を増やす」ことでしょう。投資を考えるのはその次です。