(※写真はイメージです/PIXTA)

眠れない現代人が激増しています。それは情報量が人間の脳の処理能力を超えているからともいえますが、情報が途切れることなく届く一方で、持続する緊張感も脳の機能に影響を及ぼします。どのように対処すればいいのでしょうか。精神科医が解説します。

睡眠にはレム睡眠と徐波睡眠がある

睡眠にはレム睡眠と徐波睡眠という二つの相がある。

 

レム睡眠の時に情報をシャッフルして(この時色々な夢を見ている)、重みづけして、徐波睡眠の時に必要なものを残し一斉削除していると考えられている。この作業は一定のリズムで行われるが、リズムが安定しないと、睡眠の質が落ち、徐波睡眠が消滅して、削除ができなくなる。どうでもよい情報が消えずに残り、正しい判断を阻害する。

 

情報の削除には徐波睡眠が必要である。

 

徐波睡眠は睡眠脳波を記録しているときに遅い波が出てくる相を言うが、これは深い睡眠のことで、浅い睡眠では出てこない。いつも緊張が続くために深く寝れず睡眠が浅くなり、削除されないどうでもよい情報に過敏になりやすく、それがさらに偏桃体という危機センサーの肥大過敏を招き、安心して、眠ることができなくなる。それは漠然とした不安を心に醸しやすくさせ、ますます眠りずらくなる。

不眠にはどう対処したらよいのか?

IT企業に勤めるDさんは言う、もし、深夜に及ぶ残業をへらせば、売り上げが半分に減る。それでも減らすしかない。

 

1日の内で 決めた時間にきちんと寝るために、その時は携帯のスイッチを切っておかねばならない。でも、朝、スイッチ入れた時の留守録を聞くのは恐ろしいとBさんはいう。それでも切ろう。

 

そして、定期的に自然と接する機会を作るべきである。それは、ちょっとした旅行というのではない。実際に土に触れ畑を耕したり、動物の世話をしたり、自然の中で設計図によらずにクリエチブな作業をやるとよい。自然の特徴はファジー、曖昧さにある。

 

しかも、意味あるものを生み出す力を有している。それは、主として自然が持つ見えざるリズムによる。昨今の情報、契約社会はできるだけあいまいさを排除し、自然のリズムに全く配慮がされていない。それが脳を疲れさせるのである。生き物は一時も同じ物質でできておらず、時々刻々と流動する物質が、さまざまなリズムを調和させることで、音楽のように立ち上げられているのである。

 

それゆえ、生き物はリズムある自然の流れの曖昧さ、(曖昧さが調和を生むのである)に触れると気持ちがおちつくのである。しばし、自然の流れにコラボした時間に身をゆだねることが、押し寄せるキチキチ、デジタル的情報におぼれずに済むのである。どうぞおためしあれ。 

不眠が不幸の始まりなのか?

睡眠力は幸福力だと国民的漫画『ゲゲゲの鬼太郎』の作者として有名な水木しげるはいった。

 

「人間は寝ることによってかなりの病が治る。私は“睡眠力”によって傷とか病気をひそかに治し、今日まで“無病”である。私は“睡眠力”は“幸福力”ではないか、と思っている」

 

(注)なお、渋谷で石を投げたりしないように。筆者 

 

遠山 高史
精神科医

 

 

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※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。