「専業主婦優遇」と「女性の貧困問題」は表裏一体
「会社員×専業主婦」という家族で、家計のために少しだけ世帯年収を上げたいと考えた場合、専業主婦優遇はとてもありがたいもの。しかし「専業主婦だけ優遇する制度は、いまや時代遅れ」という批判はやみません。特にやり玉にあがっているのが「第3号被保険者制度」。
国民年金は自営業者などの「第1号被保険者」と、会社員や公務員などの「第2号被保険者」、第2号被保険者の扶養となる「第3号被保険者」に分かれ、第3号被保険者であれば保険料を自身で納付する必要はなく、将来、年金を受け取ることができます。その財源は配偶者が加入している厚生年金から賄われることもあり共働き夫婦のほか、自営業者や母子世帯から批判の的になっているのです。
この制度ができたのは1985年。男女平等元年ともいうべき時代ですが、まだ「夫は外で働き、妻は家庭を守る」というスタイルが主流。所得を得られない専業主婦の年金確保が大きな課題だったため、歓迎された施策でした。
しかし90年代後半には、共働き世帯が専業主婦世帯を逆転。いまや専業主婦世帯は少数派となり、時代にそぐわないという声が目立つようになったのです。
また「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という前提が、昨今の問題となっている女性の貧困を引き起こしているという指摘も。
「第3号被保険者制度」に加え「配偶者特別控除」により、「103万円以内で働く」という意識が強まり、結果、女性の非正規率は上昇。「女性が働くなら非正規雇用」というのが当たり前となり、「女性は最低賃金に近い給与で働くもの」という社会が作られたというのです。
平成28年に厚生労働省が行った『全国ひとり親世帯等調査』によると、母子世帯の平均年収は200万円。手取りにすると月13万円程度です。それに対して父子世帯の平均年収は398万円と、200万円近い差があります。「正社員として働きたいけど、母子家庭だとパートが精一杯」という声を聞きますが、条件でいえば父子世帯も同じ。しかし「女性は非正規雇用で働くもの」という前提があり、特に子のいる単身女性は正社員になりづらい、という傾向があるのです。
専業主婦優遇と女性の貧困は表裏一体といえる状況。「3割が主食が買えない」「半数が肉や魚・野菜が買えない」「子どもの給食費が払えない」「着る服がない」……「買えない」「払えない」と、ネット上には生活苦にあえぐシングルマザーの声があふれています。そんな母子世帯を救うには「第3号被保険者制度」や配偶者特別控除」を廃止し、女性の働き方を変える必要がある……そんな主張も随分と説得力のあるものに聞こえてきます。