先週、大きく報道された、光学機器メーカーニコンによる賃金引き上げのニュース。日本の大企業で最大2割アップというのは珍しく、賞賛の声があがりました。一方でマイナスの意見も。誰もが給与アップを望んでいるはずなのに……少し不思議な日本人について、みていきましょう。
ニコン給与2割アップに「騙されるな!」…賃金アップに嫉妬する日本のサラリーマン、待ち受ける絶望 (※写真はイメージです/PIXTA)

横並びを好む日本人…周囲のやっかみが怖くて

公益財団法人日本生産性本部『第16回日本的雇用・人事の変容に関する調査結果』によると、非管理職層で最も多い賃金体系は「職能給」で76.5%。「役割・職務給」が57.8%、「年齢・勤続給」は47.1%。年功序列に該当する「年齢・勤続給」は2000年に87.0%でしたから、おおよそ半分に。一方で成果主義制度に該当する「役割・職務給」は2000年に24.9%でしたが、急速に採用が進み、2007年には56.7%と、おおよそ倍に。ただこの10年は横ばいに推移しています。

 

確実に年功序列は減少していますが、いまなお、おおよそ半数の企業が採用。一方、成果主義採用の停滞ぶりをみる限り、このあたりが天井という見方も。成果主義は「優秀な人材を確保できる」「社員の成長意欲が高まる」「人件費が最適化される」などのメリットがいわれている一方で、「社員のモチベーションが下がる」「チームワーク低下の恐れがある」「評価を明確化できない仕事がある」などのデメリットもあります。そう考えると、今後、年功序列と成果主義はうまく共存していくのかもしれません。

 

ただ成果主義を半数以上の企業が採用するようになって10年あまり。日本においても当たり前の制度となった感があります。それにも関わらず、成果に対し多くの給与を与えようとするニュースに対し、批判も多いことに驚かされます。

 

——成果をあげて評価されても、やっかみが多くて……

 

実際に、このような声も。元来、日本人は横並びを好みますから、評価される同僚、自身よりも高給の同僚、出世する同僚……上にいく人を妬みがち。ただこの感覚でいると、世界との人事獲得競争に勝つことはできず、日本経済全体のさらなる停滞はみえています。変わらぬ日本、その先には……明るい未来はないでしょう。

 

国税庁『民間給与実態統計調査』によると、2021年、日本人の平均給与は443万円。2020年の433万円から10万円ほどアップし、3年ぶりの増加となりました。コロナ禍からの回復という要素が強く、日本が上昇基調にあるとはいえませんが、良い傾向にあるのは確か。どうか、やっかみに足を引っ張られることなく、より多くの給与を手にする人が増えることを願うばかりです。