先週、大きく報道された、光学機器メーカーニコンによる賃金引き上げのニュース。日本の大企業で最大2割アップというのは珍しく、賞賛の声があがりました。一方でマイナスの意見も。誰もが給与アップを望んでいるはずなのに……少し不思議な日本人について、みていきましょう。
ニコン給与2割アップに「騙されるな!」…賃金アップに嫉妬する日本のサラリーマン、待ち受ける絶望 (※写真はイメージです/PIXTA)

大企業「給与アップします」に妬みの声、続々

——従業員の年収水準を平均約3%、最大約20%増やす

 

先日、光学機器メーカーニコンからの発表は、大きな反響を呼びました。今回の賃上げは、専門知識を持つ人材や管理職の賃金を大幅に引き上げるというもので、基本給の平均3%引き上げるほか、賞与も増やし年収は平均5%増になると試算。年間賞与は会社の業績や個人の成績で6段階で決め、同じ役職でも最大3倍に広げるとか。

 

また優秀な人材の確保に加え、インフレによる生活費上昇を受け、来年4月入社の初任給を、高卒で1万円、短大・高専卒で1万5,000円、大卒以上で2万円引き上げます。

 

このような決定の背景にあるのは、やはり高度人材の確保。特にニコンが新規事業として進める分野では、国内外での人材獲得競争が激化しているという事情があります。

 

そもそも日本における高度専門人材の賃金は、諸外国に比べて低く、その差は広がる一方。せっかくの優秀な人材が海外へと流出し、挙句の果てには、他国の経済成長を支える存在に。優秀な人材を手放した日本の経済は停滞……そんな悪循環に陥っています。

 

そんな背景もあり、今回のニコンの決断は、業績に連動しやすく個人の成果にも報いることができる仕組みにすることで、国内外の熾烈な争いをどうにか生き抜いていくために必須だったといえるでしょう。ほかの大企業がここまで大胆な賃上げ施策を実施できないなか、大きな賞賛を呼びました。

 

一方で、このような声も。

 

——騙されてはいけない、ほとんどの人は3%止まりとなるはず。20%アップなんてあり得ない

——社内で給料に差があるのは差別だ

——会社に貢献できてない人なんていないのだから、すべての社員一律で賃金を上げるべき

 

年功序列が根付いた、日本人らしい反応といったところでしょうか。確かに格差を嫌い、「1億中流」といわれ続けてきた時代の人たちからすると拒否反応も大きいでしょう。しかし「給与が低い」と嘆き、国や企業に不満を漏らす一方で、「給与を上げる」ということにも不満が生じるとは、難しいものです。