薬物療法、リハビリ…「頚椎症」の治療法
首や肩のみならず、全身にまで影響を及ぼす恐れがある頸椎症。首周りの筋肉構造を見ながら治療法をみていきましょう。
まず、頸椎症の治療では保存治療として、薬物療法やリハビリが行われます。
特に首周りで大事なのは「僧帽筋」と「胸鎖乳突筋」。悪い姿勢などが原因でこの2つの筋肉が過度に緊張すると、頚椎に障害を引き起こします。そのため、ストレッチや簡単な筋トレ、マッサージなどで、これらの筋肉を刺激し、緊張を緩めることが大切です。
首を回したりする動作が辛いときは、首の前側面にあり、後頭骨から鎖骨をつなぐ胸鎖乳突筋に原因があると考えられます。また、肩をすくめ、前に傾ける動作で痛みが生じる場合には、首から背中にかけてついている大きな筋肉の僧帽筋に原因があることが多いと考えられます。
頸椎症のリハビリでは、これらの筋肉を丹念にほぐし、緊張をゆるめることで、肩や首周辺の痛みを改善していきます。同時に、ブロック注射や痛み止めの内服薬などを用いながら症状をコントロールします。
多くの人は、こうした保存的治療で症状を軽減し、痛みを緩和できるようになりますが、保存的治療を約2~3ヵ月継続しても痛みなどの症状がひかない場合、あるいは、日常生活を妨げるほど大きな支障が生じている場合には、手術を検討します。
手術は、神経の通り道を広げる「椎弓形成術」や「内視鏡下椎間孔拡大術」、椎間板を摘出し、人工スペーサーや腸骨(骨盤の骨)を移植して固定する「前方除圧固定術」などが考えられます。
日常生活から予防!すぐにできる「首のトレーニング」
こうした頚椎のトラブルを予防するために、日常生活で気をつけるべき点がいくつかあります。
まずは、「いい姿勢を取る」ことです。特に、パソコンやスマートフォンを使用する際は、「同じ姿勢を長時間続けず、適宜休憩をはさむ」「猫背にならない」「骨盤を立てて座る」などを意識することは、スマホ首の予防になります。
そして、大切なのが「首の筋トレ」です。首の筋トレを行うことで、体幹がぶれにくくなり、スポーツのパフォーマンス向上にもつながります。
首の筋肉はとてもデリケートなので、それほど負荷をかけなくても鍛えることができます。ぜひ、これを機に毎日の習慣にしてみてください。
<頚椎症を予防するための簡単な体操>
・座ったまま、または立って足を肩幅に開いた状態で、両肩をめいっぱい上げすくめる。そのまま5〜10秒維持してから、ストンと力を抜いて肩を落とす
・肩甲骨を引き寄せるように両肘を背中側後方に動かし、肩甲骨を閉じるようにして5〜10秒キープし、ゆっくり肘を前に戻す。逆に腕を前に伸ばし、肩甲骨を開き再度5~10秒間キープしてゆっくり元に戻す。
<首を強化するトレーニング>
1.背中と首をまっすぐにしたまま、まずは額に手を当て、頭を前から押さえる。力をかけたまま10秒間キープする。このとき、手と頭が互いに均等の力で押し合うようにする。
2.次に両手を組んで頭を後ろから押さえ、10秒間キープし、先程と同様手と頭を均等の力で推し合うようにする。左右も同様に行う。
特に、「首を強化するトレーニング」は「アイソメトリクストレーニング」といい、筋肉を伸縮させずに一定の姿勢をキープして、最大筋力を発揮するトレーニング方法です。
簡単にどこでも行うことができますし、本人の出力以上に負荷がかからないため、筋肉や筋などを痛めることが少ないです。首は非常に繊細な筋肉なので、こうしたトレーニングにより短時間で効率よく鍛えるのがおすすめです。
頸椎症はストレスや運動不足をはじめ、加齢により男女ともにあらわれる「ホルモンバランスの変化」が引き金となって症状が出ることもあります。
いずれにしても、症状の悪化を食い止めるためには、できるだけ早く、最適な処置を取ることが重要です。首や肩の痛み・違和感を見逃さず、気になることがあれば早めに整形外科を受診するようにしましょう。
越宗 幸一郎
横浜町田関節脊椎病院
院長
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