日本の持ち家率は、およそ6割。年齢が上がるにつれてその割合は高まり、高齢者になると9割近くにもなります。ただし、一人暮らしの高齢者に限ると、その割合は6割近くにまで下がり、その分、賃貸派が増えます。そこには「引越ししたくても叶わない」という高齢者を取り巻く問題があるようです。みていきましょう。
日本のおひとり様高齢者…「家賃滞納で強制執行」に潜む、恐ろしい実態 (※写真はイメージです/PIXTA)

家賃が高くても引越しができない…単身高齢者の特殊事情

単身の高齢者。悠々自適というイメージがありますが、実際は自由な転居はハードルが高いなど、制限も多いもの。さらに収入が年金に頼らざるを得ない状況では経済的な不安、さらには老いによって健康面においての不安も大きくなっていくでしょう。そして自由というメリットも、次第に孤独というデメリットになっていきます。

 

厚生労働省『令和3年版高齢社会白書』によると、65歳以上の人の近所との付き合いの程度をみていくと、単身の高齢男性は「あいさつ程度」が52.0%、「つきあいはほとんどない」が13.7%。一方で単身の高齢女性は「親しくつきあっている」が34.6%、「あいさつ以外にも多少のつきあいがある」が28.4%。女性のほうが社交的で、男性のほうが孤独状態になるリスクが高いといえるでしょう。

 

そして「孤独死(誰にも看取られることなく亡くなっ た後に発見される死)を身近に感じる」という回答は、二人以上世帯では3割強であるのに対し、単身世帯では過半数を超えます。単身世帯は、より危機感が強いということです。そして東京都監察医務院によると、東京23区内における一人暮らしで65歳以上の自宅での死亡件数は、2019年に3,936人。約4,000人近い孤独死が発生しているのです。

 

家賃が振り込まれない……そこで大家は再三にわたり家賃を払うよう連絡するも音沙汰なし。仕方がなく、強制執行の手続きを進めているなか、孤独死であったことが判明する。このようなケースは増加傾向にあります。

 

結婚しなかったり、またはパートナーに先に絶たれたり。高齢者が単身である理由はさまざまですが、いまや孤独死は社会問題。自身で孤独に陥らないよう対策を講じることはもちろん大切ですが、高齢者を孤独にさせない取組みも進めていかなければなりません。