発達障害という言葉が広く知られ、理解も深まりつつあります。「発達障害と診断され、長年、もやもやとしていたものが晴れた」というような当事者からの声も聞かれます。では発達障害者が生きていくのに十分な社会になったのかといえば、どうでしょうか。厚生労働省の調査から紐解いていきます。
10人に1人が発達障害…支援広がるも、生きていくには難しい「安すぎる手取り額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

発達障害者の雇用状況は?正社員は5人に1人

発達障害が知られるようになり、理解も支援も広がりをみせるなか、当の本人たちが「生きやすくなった」といえるかといえば、そうとは言い切れません。

 

厚生労働省『平成30年度障害者雇用実態調査』では、発達障害者の雇用実態について調査をしています(調査結果は推計値)。事業所が「精神障害者保健福祉手帳により確認している」は68.9%、「精神科医の診断により確認している」は4.1%。精神障害者保健福祉手帳の等級で最も多いのは「3級」で48.7%、最も多い疾病は「自閉症、アスペルガー症候群その他広汎性発達障害」で76.0%でした。

 

発達障害者が働く業界で最も多いのは「卸売業、小売業」で53.8%。次いで「サービス業」15.3%、「医療、福祉」11.6%と続きます。事業規模別では「従業員5~29人企業規模」が最多で58.5%。「30〜99人企業」28.3%、「100〜499人企業」9.9%と続きます。

 

雇用形態では、「有期契約の正社員以外」が45.9%。「無期契約の正社員以外」が31.3%、「無期契約の正社員」が21.7%と続きます。週所定労働時間は、「通常(30時間以上)」が最多で59.8%。「20時間以上30時間未満」が35.1%と続きます。

 

そして給与は月に平均12万7,000円。超過勤務手当を除く所定内給与額は12万3,000円。手取りにすると、9万~10万円程度です。週所定労働時間が通常の30時間以上に限定すると、月16万4,000円。手取りにすると、12万~13万円程度。十分な給与を手にできているとはいえないでしょう。

 

発達障害といっても一人ひとり症状等が異なります。一般の人以上に働ける人もいれば、就業も難しいケースもあるでしょう。また発達障害者を受け入れることができる企業側の事情もあります。調査結果もそのまますべての発達障害者に当てはめることはできません。

 

ただ発達障害者が活躍できる土台が確立されているか、といえばまだまだ不十分。同調査では「発達障碍者を雇用したくない」が22.0%と5社に1社。無条件に発達障害を受け入れられるほど理解が進んでいなければ、制度も整っているとは言い難い状況です。