発達障害という言葉が広く知られ、理解も深まりつつあります。「発達障害と診断され、長年、もやもやとしていたものが晴れた」というような当事者からの声も聞かれます。では発達障害者が生きていくのに十分な社会になったのかといえば、どうでしょうか。厚生労働省の調査から紐解いていきます。
10人に1人が発達障害…支援広がるも、生きていくには難しい「安すぎる手取り額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

「発達障害、急増」のきっかけとなった、2004年「発達障害者支援法」制定

——ちょっと変わってる

 

そういわれていた人(子)に「発達障害」と診断がつくことが多くなったのが、いまから20年ほど前の2004年。発達障害者支援法が制定されてからではないでしょうか。

 

発達障害者支援法第一章第二条

「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。

 

また厚生労働省では発達障害を「生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態です」と定義し、「自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)、学習症(学習障害)、チック症、吃音などが含まれます」と記しています。

 

同法ができてから発達障害という言葉が広く知られるようになり、「自分もそうなのではないか……」「我が子ももしかして……」と思い、医師の元へ。「発達障害」と診断されるケースが増えていったのです。

 

文部科学省『特別支援教育に関する調査』によると、通級による指導を実施した児童生徒数は、発達障害者支援法ができた2004年(平成16年)以来、右肩上がり。2020年には通級で指導を受ける児童生徒は16万4,693人で、前年比約3万人増。そしてこの10年、ADHD(注意欠陥多動性障害)は6倍に増えたほか、LD(学習障害)、自閉症、情緒障害とされる児童生徒の数が急増しています。これは広く「発達障害」という言葉が知られるようになったからだと考えられます。

 

また発達障害児はどれほどいるのかを語る際、よく知られているのが、2012年に文部科学省が全国の公立小中学校1,200校、通常学級に在籍する児童生徒約5万2,000人に対して行った調査によるもの。それによると、発達障害児の割合は6.5%。小学校1年生に限っては10人に1人程度でした。そこで「10人に1人は発達障害」といわれるようになったのです。