子どものいる家庭であれば、手にすることができる児童手当。来月から「所得上限限度額」が適用され、所得が多いと1銭ももらえなくなります。「給与が良く、生活も楽なんだから、問題ないでしょ」と多くの人は思いがちですが、当の本人たちからは恨み節も。みていきましょう。
年収1,200万円超のエリート会社員…「高給取りで勝ち組」のはずが生活苦のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

年収1,200万円、月手取り額50万円…高給でもツライ

色々な工夫で所得を抑えて、引き続き、児童手当、特別給付金を手にする方法はあります。とはいえ「そもそも給与がいいのだから、手当なんていらないでしょ」という声もチラホラ聞こえてきます。

 

厚生労働省『2021年 国民生活基礎調査』によると、「児童(当調査では18歳未満の未婚の者)のいる世帯」は、全国で1,073万7,000世帯。子どもが1人が502万6,000世帯、2人が426万7,000世帯、3人以上が144万4,000世帯です。また世帯の「総所得」は平均813万5,000円。そのうち会社からの給与である「雇用者所得」は695万1,000円、税金等を引いた「可処分所得」は平均653万円でした。

 

さらに所得五分位階級(すべての世帯を所得を低い方から順番に並べ、それを調整集計世帯数の上で五等分して五つのグループを作った場合の各グループ)でみていくと、最も所得の低い「第1階級」は211万円で全体の4.0%「第Ⅱ階級が」358万円で5.8%、「第Ⅲ階級」が546万円で17.4%、「第Ⅳ階級」が831万円で35.0%。

 

このように高給取り世帯が平均値を引き上げていることが分かり、「給与が高いのだから、児童手当が手にできないからといって困らないだろう」という声にも納得感があります。しかし当の本人からは「なぜ自分たちばかり狙い撃ちされるのか」という嘆きが聞こえてきます。

 

同調査では「生活意識」について尋ねていますが、子育て世帯においては「苦しい(「大変苦しい」と「やや苦しい」の合計)」が59.2%。「普通」が36.6%、「ゆとりがある(「ややゆとりがある」と「大変ゆとりがある」)は4.2%に過ぎません。給与の実態に比べて、生活苦を感じている子育て世帯は多く、それは高所得の会社員も例外ではないでしょう。

 

年収1,200万円の場合、月々の手取りは子ども2人で51万円ほど(厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』より、大卒男性の場合で算出)。そこから生活費のほか、子どもたちの教育費を支払うことになります。文部科学省の資料によると、幼稚園から大学まですべて国公立に通わせたとして、子ども1人当たりの教育費はおよそ800万円、すべて大学だけ私立の場合は1,000万円、高校から私立だと1,200万円、中学から私立だと1,500万円……。そこに養育費もプラスされるわけですから、子ども一人を育て上げるには、かなりの出費になります。

 

給与だけでは足りないので、奨学金に頼ることもあるでしょう。ただそこにも所得制限があり、高所得世帯は自力でなんとかしなければならない……そんなシーンばかりになるわけです。

 

とびきり高所得で「余裕がある」とこたえられるのならいいのですが、特にボーダー上にいるような高所得会社員は、想像以上に生活が厳しいのが現状。一律の所得制限をただ嘆くしかないのです。