(※写真はイメージです/PIXTA)

血圧が低下し短時間意識を失う「失神」。驚くことに日本人のおよそ5人に1人が、人生で1度は失神を経験するとされています。その原因と対処法について、東京ハートリズムクリニックの桑原大志院長が解説します。

失神を「予防」することはできるのか

失神を引き起こす原因にはさまざまなものがありますが、失神を「予防する」ということはできるのでしょうか。また、いざというときにはどのように対処したらいいのでしょうか。毎日の生活に役立つ知識をご紹介します。

 

失神で倒れたら「足を高くして、頭を低くする」

失神の原因として1番多いのは「神経反射性失神」であり、心停止型と低血圧型の2種類があることは、上記でお話しした通りです。率直にいって、心停止型の場合はペースメーカーを使用することである程度失神を予防することはできますが、低血圧型の場合には予防はほとんど不可能です。

 

神経反射性失神を起こしたときは、[画像1]のように足を高くして頭を低くし、脳に血液が流れるようにすることが大切です。こうすると失神が改善され、気分が楽になります。

 

[画像1]「神経反射性失神」を起こしたときは、足を高く・頭を低く

 

この対処法は、自分が失神で倒れたときだけでなく、身の回りの人が急に失神で倒れたときなども役立ちます。ぜひ、覚えておいてください。

 

ただし、「足をあげる」という対策が有効なのは、神経反射性失神や起立性失神のように「血圧低下」が原因の場合だけです。不整脈が原因となっている失神の場合は効果が期待できないため、注意が必要です。

 

失神の完全な予防法は「ない」

生活習慣で失神が起きないように気をつけられることは、塩分を少し多めに取ることくらいでしょうか。残念ながら失神を完全に予防することはできません。

 

しかし、なかには「注射をすると失神するので、あらかじめ仰向けになって注射する」といったように、「こうすると失神が起きる」ということを経験則的に知っている方もいます。自分の失神してしまうパターンがわかっている場合は、事前に安全を確保しておきましょう。

 

また、テレビなどで、失神を起こした人に冷水をかけたり顔を叩いたりするシーンを見たことがあるかもしれません。

 

これにも実は意味があり、交感神経を緊張させて血圧を上げているのです。そのため、もし身近な人が失神を起こしたら、無理のない範囲でこうした対応をするのもひとつの手段です。

失神を繰り返してしまう方は「チルトトレーニング」を

しかし、「血管迷走神経性反射」のケースのように、失神を頻繁に繰り返してしまう人もいます。

 

この場合、[画像2]のような起立調節訓練法(チルトトレーニング)を行うことによって失神を起きにくくさせます。

 

正直なところ、あまりエビデンスがないため効果は定かではありませんが、一般的にはチルトトレーニングを繰り返すうちに血管の抵抗があがって収縮しやすくなり、その結果、失神が起こりにくくなるといわれています。

 

血管迷走神経性反射による失神を繰り返している人は、1日1回、20分程度試してみるといいかもしれません。

 

[図表2]チルトトレーニング

 

<起立調節訓練法(チルトトレーニング)のやり方>

1.壁に背中を密着させ、かかとを壁から15cm離して立つ。
2.そのまま壁にもたれた状態で20分程度キープする。

※トレーニング中に気分が悪くなったり、動悸やめまいを感じたりしたときはすぐに中止し、かかりつけ医に報告してください。

 

まとめ

冒頭でお話したとおり、失神は日本人の20%が経験します。特に神経反射性失神は、失神とはいかないまでも近い状況を体験したことがあるはずです。

 

しかし、倒れた場所などによっては、重篤な怪我や事故につながりかねません。

 

身近な人が失神を起こしたら、「すぐに安全を確保できる場所へ運ぶ」、そして先にお伝えした通り「足を高くして血流を改善する」という対処法を行いましょう。

 

また、原因を探るためにも、失神を起こしたら循環器科を受診することを忘れずに。不整脈などの疾患が原因となって失神が起きている場合もありますからできるだけ早く受診し、失神したときの状況や症状、その後の経過などを詳しく医師に伝えましょう。

 

 

桑原 大志

東京ハートリズムクリニック

院長

 

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※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。