(※写真はイメージです/PIXTA)

「クリニック経営戦国時代」ともいわれる昨今。やっとの思いで開業を実現させても、競争激化にコロナ禍が追い打ちをかけ、廃業に追い込まれる医療機関が増えています。今回は、高座渋谷つばさクリニック院長の武井智昭先生が廃業の原因を分析しながら、「開業すれば儲かる」という甘い誘惑に乗ってしまった医師Aの、悲惨すぎる末路を紹介します。

身体も経営もボロボロ…決断した「廃業」の2文字

途方にくれたドクターAですが、人材紹介会社を頼り、新たなアルバイト先を求めて面談を繰り返しました。しかし残念ながら、こうした履歴やバックグラウンドのある医師が雇用されることはなく、19もの医療機関からお断りされてしまいました。

 

最後に面談を行った医療機関の院長・事務長からは「先生は、患者やスタッフと話さない職業や勤務先が向いているよ」といわれてしまう始末です。

 

しかし、この助言を素直に受け入れたAは、コミュニケーションが発生しない重症心身障害者を主に対応する療養型施設に応募。なんとか週2回(水・日)の日勤と+週1回の当直(水の夜間)の職を得ることができました。

 

最近では、空前絶後の高報酬(時給2万円以上)である新型コロナワクチン集団接種のアルバイトにも手を出しておりましたが、体力面の理由で長続きはしませんでした。

 

さらに追い打ちをかけるように、不健康な生活が災いし、とある年の健康診断で「2型糖尿病、高コレステロール血症、高血圧症、アルコール性肝炎」との結果が。重度な検査異常値を検診医師から指摘され、ドクターストップを推奨されました。

 

振り返れば、新婚旅行でヨーロッパに行った帰りに「成田離婚」を経験し、5つの医療機関を転々としたのち、「開業すれば儲かる」という甘い誘惑に乗ってしまったA。今年60歳の還暦を迎えるにもかかわらず、“赤いちゃんちゃんこを着る”ことも、誰1人として人生を語る友人医師もいない状況に陥っていました。

 

結局Aは、コンサルタントの薦めもあって「廃業」を選択。幸いなことに、クリニックは大手医療法人にM&Aで買い取られました。現在では、新たに派遣・赴任された院長のもとで勤務医を続け、膨大に膨れ上がった借金の返済にいそしんでいます。

 

自分自身を顧みて改めようとしないと、こうした残酷な結末を迎える医師もいます。「地域住民や医療界の正当な評価」が、よくも悪くも医師の人生を変えてしまうのです。

 

 

武井 智昭

高座渋谷つばさクリニック

院長

 

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