(※写真はイメージです/PIXTA)

人生100年時代。NPO法人「老いの工学研究所」理事長の川口雅裕氏は、書籍『年寄りは集まって住め』のなかで、「老後2000万円」について解説しています。

「老後800万円」のほうが的を射ている?

もっとも厳しいのは、働いていない単身女性ですが、毎月の取り崩し額が2万1400円なので、年間約25万7000円。これが30年続くと770万円となります。

 

「老後2000万円」どころか、「老後は800万円」くらいあればいいということになります。

 

さらに言えば、働いて収入を得ている世帯を見れば、夫婦世帯で毎月1万7600円、単身男性では3万5700円の黒字となっていますから、月数万円くらい働いて稼げば貯蓄を取り崩さずに暮らしていけるのです。

 

「老後2000万円」とは余りに大きな違いがあるので、どちらを信じたらいいのか……と思われるかもしれませんが、収入の把握の仕方にほころびがある(年金収入の記入漏れが2割も含まれている)という点で、私には「老後に2000万円が必要」はかなり眉唾のように感じられます。

 

2018年度版「高齢社会白書」に、高齢者の「経済的な暮らし向き」に関するデータが掲載されています([図表2])。

 

[図表2]

 

それによると、「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮している」が15.0%、「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」は49.6%で、合計は64.6%となります。「多少心配である」と答えた26.8%も合わせれば9割を超えます。

 

高齢者が、平均的に毎月5万円以上の貯蓄の取り崩しがあるとしたら、このような家計のゆとりを感じるでしょうか。

 

こう考えれば、やはり「老後800万円」のほうが的を射ているのではないかと私は思います。

 

 

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川口 雅裕


NPO法人「老いの工学研究所」理事長。 1964年生。京都大学教育学部卒。 株式会社リクルートコスモス(現株式会社コスモスイニシア)で、組織人事および広報を担当。 退社後、組織人事コンサルタントを経て、2010年より高齢社会に関する研究活動を開始。約1万6千人に上る会員を持つ「老いの工学研究所」でアンケート調査や、インタビューなどのフィールドワークを実施。高齢期の暮らしに関する講演やセミナー講師のほか、様々なメディアで連載・寄稿を行っている。 著書に、「だから社員が育たない」(労働調査会)、「速習!看護管理者のためのフレームワーク思考53」(メディカ出版)、「実践!看護フレームワーク思考 BASIC20」(メディカ出版)、「顧客満足はなぜ実現しないのか」(JDC出版)、「なりたい老人になろう~65歳からの楽しい年のとり方」(Kindle版)がある。

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『年寄りは集まって住め』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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