生活に制限が多くなってくる老後。どのように暮らしていくか……その選択肢のひとつが老人ホームです。最近は、さまざまな特徴をもった施設が誕生しているので、比較・検討して選ぶことが重要ですが、それでも入居後のトラブルは後を絶たないようで……みていきましょう。
年金「平均月14万円」だが…老人ホームの請求額に「ぼったくりか!」と一喝のワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

パンフレットには14万円って書いてあったじゃない!後を絶たないお金のトラブル

国民年金受給者の平均受取額は月額5万6,358円、厚生年金受給者の平均受取額は月額14万6,145円*。費用のミスマッチを減らし、年金だけで老人ホームへの入居を考えるなら、このあたりが費用の目安となるでしょうか。

 

*厚生労働省『令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』より

 

入居を検討するにあたり見るべき費用は、「一時入居金」と「月額費用」。一時入居金は終身利用する権利を取得する目的に対し支払うもの。償却期間内に退去した場合は返還金を受け取ることができます。金額は施設によってまちまちで、数十万円、数百万円というところから、0円、という施設まであります。

 

月額費用には「家賃」「管理費」「食費」「介護保険サービスの自己負担分など」「個人で支払う費用」が含まれます。こちらもピンキリですが、10万~30万円程度の施設が多いようです。

 

「年金だけで施設に入居」という場合、元・会社員で厚生年金を受け取っている人であれば多くの選択肢がありますが、国民年金だけという場合は、施設は限られるのが現状です。ただ生活保護を受けながらでも入居できる施設もあるので、可能性がないわけではありません。

 

ーー予算であわせて吟味し、費用的にもぴったりの施設に入居できた

 

これで安心と思いきや、老人ホームのお金にかかわるトラブルは後を絶たないといいます。利用料金でありがちなのは、施設のパンフレットに書いてある月額費用と実際の請求額に差異があるケース。

 

ーーパンフレットには月額14万円と書いてあったのに、25万円も請求なんて、ぼったくりか!

 

パンフレットに書いてあった倍近くの費用を請求された、というケースも珍しくないようです。ただそこには利用者側の落ち度もあり、月額費用に含まれる内容を理解していない、ということが要因のひとつ。どのようなサービスが含まれているかは施設によってまちまち。食事は別契約、介護保険1割負担分は含まれてない、レクリエーション代は都度請求……。入居前に確認しておけば避けられるトラブルが多いのです。

 

ただ故意に詳細は伏せるような施設も散見されるよう。以前はこの手のトラブルが多く、景品表示法違反で排除命令がなされ、指導の徹底が呼びかけられたことがありました。現在、一般消費者が有料老人ホームを選択する時点において重要な判断要素となると考えられる、以下1~7の事項について、明瞭に記載されてなかったり、表示の内容が明らかにされていないものについては、不当表示と規定されています。

 

1.土地又は建物についての表示

2.施設又は設備についての表示

3.居室の利用についての表示

4.医療機関との協力関係についての表示

5.介護サービスについての表示

6.介護職員等の数についての表示

7.管理費等についての表示

 

つまり、これらの内容を理解せずに入居を決めるということは、自らトラブルを招いているといえます。これらを明快にしておけば、トラブルに合う確率は低くなるでしょう。

 

老人ホーム選びは「いよいよ施設に頼らないと……」と、切羽詰まった状況になってから始めがち。時間的猶予もそれほどなく、チェックすべきところを見落とすことも多いとか。健康なうちに本人や家族まじえて検討するのも、トラブルを避けるためのひとつの手です。