毎月の利用料を払えずに…老人ホームを退所する高齢者たち
厚生労働省『令和3年簡易生命表』によると、2021年の日本人の平均寿命は女性が87.57歳、男性が81.47歳。さらに日本人の健康寿命は2019年値で、女性は75.38歳、男性は72.68歳。単純計算、何かしら健康上の制限を抱えながら、女性であれば12年、男性であれば9年ほどを暮らしていく、ということになります。
どれほどの制限となるかは、人それぞれであり、まわりに頼れる人がいるかどうかなども関係してくるでしょう。ただ日常生活が困難になってくると、介護、さらには老人ホームへの入居が選択肢になります。
最近は健康なうちから入居するタイプの施設も増え、そのような場合、自身でホーム選びをするケースが多いようです。ただ何かしら制限が生じてからの場合、本人ではなく、その家族が施設を探すケースが多いよう。「老後のことなんて、ずっと先のこと」と思っていたら、親の入居のことを考えなければならず、あたふた……そのようなことも多いようなので、普段から自分ごととして考えておきたいものです。
親が探すにしろ、子どもが探すにしろ、最も気にかかることのひとつが費用。どんなに入居者本人に合った施設だったとしても、予算オーバーであれば意味がありません。
少々古い資料ではありますが、公益社団法人全国有料老人ホーム協会が2013年に行った『有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅に関する実態調査』によると、老人ホーム退去の理由で最も多いのは逝去にともなうものですが、それ以外の理由に焦点をあてると、最も多いのが「医療的ケアニーズの高まり」。以降は施設の種類によってまちまちですが、「経済的な理由による負担継続困難」が介護付きホームでは35.3%、住宅型ホームで22.7%、サービス付き高齢者向け住宅で16.1%。費用的なミスマッチが原因での退去が、一定数いることが分かります。
【老人ホーム「志望以外の退去理由」】
■介護付きホーム
医療的ケアニーズの高まり:60.9%
済的な理由により負担継続困難:35.3%
要介護状態の進行による身体状況の悪化:17.7%
心身の状態の回復に伴う自宅復帰:16.8%
家族・親族との関係再構築、同居開始等:14.4%
■住宅型ホーム
医療的ケアニーズの高まり:50.0%
要介護状態の進行による身体状況の悪化:27.6%
経済的な理由により負担継続困難:22.7%
認知症の進行による周辺症状の悪化:17.9%
心身の状態の回復に伴う自宅復帰:13.4%
■サービス付き高齢者向け住宅
医療的ケアニーズの高まり:43.8%
要介護状態の進行による身体状況の悪化:24.4%
認知症の進行による周辺症状の悪化:22.7%
経済的な理由により負担継続困難:16.1%
集団生活が困難(他入居者とのトラブル多発、関わり拒否等):15.8%
出所:公益社団法人全国有料老人ホーム協会『有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅に関する実態調査』(2013年)