老後の生活シミュレーション…"現役感覚"では破綻の一途
貯金を含めた「老後の総資金」
では、これをもとに老後の生活をイメージしていきます。
まず収入を考えると、これまでみてきた老齢年金が大半を支えることになります。
次に、年金を何年受け取るかを考えてみます。2019年度の65歳時点での平均余命が男性19.83年、女性24.63年であることから鑑みて、夫婦共に25年間年金を受け取ったとします。つまり、
となります。
ここに65歳までに積み上げた貯金が加わります。19年の金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、60代世帯における平均貯蓄額が1,635万円、中央値が650万円となっています。平均値でみると一部の富裕層によって大きく歪められてしまうため、今回はモデルケースに沿って、中央値の650万円を採用することにします。
以上から、今回のモデルケースの夫婦は、
で老後を過ごすことになります。
老後の支出…節約しなければ「800万円」の大赤字
一方、老後にはどんな支出が待っているのでしょうか。
総務省「家計調査」によると、平成28年における世帯主が60歳以上、無職世帯の1ヵ月の支出は約24万円でした。内訳は以下となります。
住居費:14,346円
水道光熱費:20,427円
家具・家事用品:9,290円
被服等:6,737円
保健医療費:14,646円
交通・通信費:26,505円
教育・教養娯楽費:25,712円
こづかい:6,225円
交際費:25,243円
その他支出:22,280円
そうすると、1ヵ月24万円の支出が25年間かかるとして、
が必要となります。
以上から、老後資金はおよそ800万円の不足となります。これを解消しようとすると、
となり、毎月25,000円出費を抑える工夫をしないといけません。
まず高齢であることを考えると、収入の大幅な上昇や借入は非現実的となりますので、支出への対策を取るしか方法はありません。さきほどの支出一覧を参照すると、「教育・教養娯楽費」や「交際費」を抑える、もしくはそこに生きがいを感じるのであれば「食費」を切り詰めるといった方法を取らざるを得なくなります。
このように、趣味を諦め、食費を抑えた生活が長く続くと思うと、ちょっと残酷ですよね。
ところが老後は生活のダウンリスクが多く存在していますので、さらにここに追い討ちがかかる可能性が非常に高いです。
その追い打ちのひとつは、昨今の物価高です。この傾向が続くと、老後の資金計画に大幅な狂いが生じます。実は、年金制度のうえで物価に追いつけない「仕掛け」のようなものが存在しているからです。