老後のおカネ…あとでなんとかなる?
筆者が20代後半~40代前半のお客様から受けるお金の悩みとしては、「教育費」や「住宅費」のご相談が多くあります。一方で、「老後」に関する相談は相対的に少ないように見受けられます。
金額も大きく、タイミングとしても差し迫っている状況で教育費や住宅費に目が向いてしまうのは当然といえば当然ですが、「老後」問題はあとでなんとかなるものなのでしょうか?
今回は老後を支える年金にフォーカスし、その概観を確認することで、いまから老後のおカネについて意識を持っていただくきっかけになればと思います。まだ先のことだからこそ、無理のない地道な手段が選択肢として残されているのです。
「天引き」が盲目にさせる…年金制度の概要
では、まず年金制度の概要をおさらいしてみましょう。公的な年金は、”2階建て”の形を取っています。
⚫︎厚生年金……主に会社員や公務員の方が加入する年金で、2階部分にあたります。
自営業や農業従事者、無職の方、学生、これらの配偶者は「第1号被保険者」、厚生年金に入っている人が「第2号被保険者」となります。さらに、「第2号被保険者」に扶養されている配偶者は「第3号被保険者」として区分されています。
この保険料の払い方が、老後の年金に対して無意識になる原因のひとつになっているかもしれません。
第2号被保険者は、給与天引きにより国民年金保険料と厚生年金保険料をまとめて払うシステムです。さらに「第3号被保険者」は国民年金しか入れませんが、その保険料も第2号被保険者がまとめて払っています。よって、どちらも別途で国民年金保険料を払う必要がありません。この「天引き」が盲目にさせているのです。
手取り400万円の会社員世帯…年金は「現役時の半額」に
さて、実際には老後どれほどの年金が受け取れるのでしょうか。
年金の計算は少々面倒ですので、詳しくは日本年金機構が提供する『ねんきん定期便』を参照していただければと思います。年金の計算は複雑ですが、概算であればさまざまなサイトでシミュレーションができるので試してみてください。
今回はモデルケースとして、夫婦共に30歳、夫が年収500万円(手取り400万)の会社員、妻が専業主婦の方という設定でシミュレーションを算出しました。
その結果、
<夫>
老齢厚生年金:9.7万円/月
老齢基礎年金:6.4万円/月
<妻>
老齢厚生年金:0万円/月
老齢基礎年金:6.4万円/月
となります。
なお、ここからわかるように、片働き世帯は共働き世帯と異なり、妻の老齢厚生年金はありません。先述のとおり、第2号がまとめて払っているのは「国民年金の保険料」だけだからです。
今回のケースでは、年金合計が22.5万円/月となります。これを年ベースに直すと年間270万円となるのですが、実は年金にも所得税・住民税および国民健康保険料(もしくは後期高齢者医療保険料)や介護保険料がかかります。高く見積もって15%とすると、年金の手取りは約230万円となります。
つまり、収入は「現役時のおよそ半分」になるということです。この大きな下落率と、それに追いつかない生活意識の差が、老後を狂わせる元凶のひとつとなります。