計算ミスでペナルティも…「RSU」「ストックオプション」の確定申告【税理士が徹底解説】

計算ミスでペナルティも…「RSU」「ストックオプション」の確定申告【税理士が徹底解説】
※画像はイメージです/PIXTA

外資系企業を中心に、現金で支払う給与のほかに、インセンティブとして株式を付与する制度「RSU(ストックアワード)」や「ストックオプション」を取り入れるケースがあります。その場合、確定申告の必要がありますが、間違えた方法で行っているケースが散見されるといいます。そこでサラリーマンの節税相談で定評のあるトランス税理士法人の中山慎吾税理士に、RSUやストックオプションの確定申告、さらにはサラリーマンでもできる税金対策について解説いただきます。

サラリーマンでもできる税金対策、3つ

上記のように、RSUやストックオプションの申告は複雑な上に納税額も高額になりがちで、重税感を感じている方も多いのではないでしょうか。そんな方のために、税金対策の方法を紹介します。

 

もしサラリーマンが税金対策をする場合、下記の3つが考えられます。

 

1つ目は所得控除を増やす方法で、以下のようなものが挙げられます。

 

・小規模企業共済等掛金控除(iDeCo)

・生命保険料控除

・地震保険料控除

・医療費控除

・ふるさと納税

……など

 

所得控除を増やすことで課税所得が下がり、納めなければならない税金の金額を減らすことができます。しかし、以下の懸念点もあるため注意が必要です。

 

・控除の上限額が決まっている

・ご自身の財布から手出しが必要になってくる

・手出しした分が全額控除される(税金が戻ってくる)わけではない

 

2つ目は、住宅ローン控除や配当控除など税額を直接減らすことができる税額控除を上手に活用する方法。

 

3つ目は、総合所得を下げる方法です。

 

所得税法69条第1項に損益通算という規定があります。これは、総合所得が2つ以上ある中で赤字所得があった場合、その他の所得(給与所得など)から赤字分を差し引くことができるというものです。

 

損益通算とは、各種所得金額の計算上生じた損失のうち一定のもの(損益通算の対象となる所得の範囲)についてのみ、一定の順序にしたがって、総所得金額、退職所得金額または山林所得金額等を計算する際に他の各種所得の金額から控除することです。

※引用:国税庁ホームページより(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2250.htm)

 

この損益通算をするために赤字所得として適用しやすい所得区分は、不動産所得と事業所得となっています。ここで注意しなければならないのは、事業所得の場合は最高裁の判例(昭和56年4月24日)によると「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」という条件を満たさないと事業として認めらない可能性があることです。

 

さらに、実はいま国税当局が「令和4年分 所得税基本通達の改正に対するパブリックコメント」を募集しており、募集期間は2022年8月1日~8月31日です。これの意味するところは「改正内容はほとんど固まっていて、形式的に国民にも意見を募集している段階まで進んでいる」ということです。

 

今回の改正内容の要点は次の点です。

 

・副業に係る売上が300万円以下の場合、原則として雑所得(業務)と扱う

・社会通念上「事業」と認められなければ売上が300万円を超えていても雑所得と扱う

 

このように、原則として事業所得と認めない「数値基準」が設けられることになります。事業所得ではなく雑所得となる場合の大きなポイントは下記です。

 

・開業届提出の有無は関係なくなる

・青色申告の特別控除は適用できなくなる

・副業が赤字になっても損益通算ができなくなる

 

つまり、国税当局は「事業所得の赤字による損益通算」という節税策を封じるための改正を行う予定なのです。これがいつから改正されるかと言うと、「令和4年分」から適用される予定ですので、いきなり今年から変わります。

 

社会通念上「事業」と認められれば売上が300万円以下であっても事業所得扱いとなるということにはなっているようですが、国税側が事業所得として認めない場合は、行政指導で事業所得ではなく雑所得の業務ではないかと指摘されたり、税務調査が入ったりする可能性があります。事業所得の赤字による損益通算のハードルがかなり上がるため、非常に重要な改正だと言え、節税を検討する方にとっては注意が必要です。

 

 

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