現役世代が納める保険料で、その時々の高齢者世代に年金を給付するという、日本の年金制度。しかし支える現役世代も支えられる高齢者も共倒れ、という未来が現実のものになろうとしています。みていきましょう。
手取り25万円では、ムリ…高齢者に潰される現役世代「日本崩壊」の現実味 (※写真はイメージです/PIXTA)

年金積立金、過去最大の黒字額に…一方で年金の運用は赤字に

先日、厚生労働省は、2021年度の公的年金の収支決算を発表しました。それによると、厚生年金と国民年金の積立金の合計額が時価ベースで過去最大の204兆6,256億円に達し、2020年度から10兆781億円も増えました。これは2021年度の公的年金の運用が大幅な黒字になったことで、全体を押し上げた結果だといいます。

 

その内訳をみていきましょう。厚生年金は194兆0,615億円で2020年度から9兆8,478億円の増加。新型コロナウイルス感染症の対応として実施した保険料納付を猶予する特例制度によって、2021年度の保険料収入が増えたことが一因となっています。一方で国民年金は10兆5,642億円で、2020年度から2,303億円の増加。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)からの納付金が増えたことが要因となっています。

 

そのGPIFの21年度の運用実績は10兆925億円の黒字でした。

 

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は預託された公的年金積立金の管理、運用を行う独立行政法人。年金保険料として集められた公的年金積立金は、GPIFが運用受託機関を通して国内外の債券や株式で運用され、年金給付の原資となります。その運用マネーは、なんと200兆円弱。世界最大規模となっています。

 

公的年金という性質上、長期的、安全かつ効率的な観点が重視されていますが、そのようななか10兆円もの黒字ですから、「日本の将来も安泰」と思えてきますが、つねに運用がうまくいくとは限りません。

 

先日、GPIFが2022年4~6月期の運用実績を発表しましたが、結果は赤字で、その額、3兆7501億円。世界的なインフレの対応として、相次いで金利の引き上げが行われ、それにより景気後退への警戒感が広がったことで株安に。1~3月期も、ロシアのウクライナ進行の影響により、2兆2,000億円の赤字を記録。2期連続の赤字は2016年上半期ぶりだといいます。

 

前出のとおり、公的年金という性質上、長期的な観点で運用されているので、一喜一憂するものではなく、また年金給付額に影響するものではない、とコメントが出ています。このようなコメントは、毎度のこと。黒字だろうが赤字だろうが、すべては想定通りなのでしょう。