多くの会社員の夢であるマイホーム。30代で購入、定年前にローンを完済し、老後のための貯蓄を本格化させる……そんなプランが一般的でしたが、いまどきは違うようです。最近の住宅購入事情をみていきましょう。
定年後も苦しい…60代でもローン地獄から抜け出せない、サラリーマンの辛酸 (※写真はイメージです/PIXTA)

返済負担増×完済予定年齢上昇…その先にある最悪の事態

前述の調査から、新築分譲マンションを購入した平均的な会社員のケースを考えてみましょう。男性40代前半の月収は平均40.4万円、手取りにすると31万円ほど、推定年収は606万円になります。返済負担率から月々の返済額は11万円ほどとなり、ローンを差し引いた20万円ほどで家族の生活費をまかなうことになります。

 

マンション購入時のライフステージはさまざまでしょうが、平均的なタイミングで結婚、出産をしたとなると、マンション購入後に教育費の負担は徐々に重くなるとき。住宅ローン×教育費で家計は火の車というのも珍しくないでしょう。

 

定年を間近に控えたころに、ようやく子どもの教育費の負担からは解放。しかし繰り上げ返済などしていなければ、10年以上、ローン返済が残っているというのも一般的です。

 

以前は、30代で住宅を購入、60代前に完済。65歳の年金生活に備えて、貯蓄を本格化……というパターンが多数派でしたが、いまでは、70歳前後でローン完済も珍しくありません。つまり、60歳で定年を迎えた後も働き続けることが大前提。ローン返済を続けながら、老後資金の貯蓄にも励むというのが一般的です。

 

しかし60歳で定年を迎え、再雇用などによって働き続けることができたとしても、収入は平均で3割減。そのようななか、ローン返済と並行しながら老後資金を準備する必要があります。定年を迎えれば余裕をもって働けるかといえば、そうはいかなさそうです。

 

60歳を迎えても、住宅ローンが重くのしかかる……これがマイホームという夢を実現させる、平均的なサラリーマンの姿。定年後は悠々自適、というのは、もはや昔の話だといえるでしょう。

 

日本の健康寿命は2019年値で男性は72.68歳、女性は75.38歳。年々、住宅購入年齢はあがり、それにより完済年齢も上昇していますが、健康寿命の延びも鑑みると、70歳前後でローン完済というのも、いまどきは現実的なことかもしれません。