いつの間にかできている口内炎。いつか治るだろうとつい放置してしまいがちですが、いつまでも治らない口内炎は、「舌ガン」を疑ったほうがいいかもしれません。食生活が変化し、食事の際あまり嚙まなくなった現代では「歯並び」が原因で舌ガンになる人が増えていると、医療法人健幸会安藤歯科クリニックの安藤正之先生はいいます。今回は、そんな現代の舌がんの原因と予防方法、口内炎との見分け方について詳しくみていきます。
若年者に急増する「舌ガン」
まずお伝えしたいのは、現代の若年者の歯並びが、全体に小さくなっている傾向にあるという事実です。そして、舌ガンになる外的要因(環境因子)の大きな原因は、2つの「持続した刺激」です。これは大きく分けて、お酒やタバコといった「化学的刺激」と虫歯や歯の尖りで舌などが擦過される(こすられる)「物理的刺激」の2種類があります。
私が学生だった30数年前、「口のなかのがん」というと「中年以降の男性の病気」というイメージがありました。患者さんの多くは時代的にお酒とたばこを日常的に嗜み、いまよりも歯の衛生に関する知識も不十分で、口中が不潔なためにかかってしまうというケースです。
しかし近年、驚くべきことに、お酒とたばこの習慣がなく口のなかもきれいな若年者に舌ガンが増えてきています。
近年の場合、若年者の舌ガンにおける原因歯がハッキリと特定できるケースが、東京歯科大学の口腔外科チームが2020年に発表した論文では9割にも上ります※。
※ 若年者扁平上皮癌の発症誘発因子の検討 口腔腫瘍32巻2号29~37頁2020
つまり、噛まないために歯並びが小さく狭くなったことが、若い方の舌ガン増加につながっていると推測できるのです。
歯並びが“小さく狭く”変化している現代人
では、現代人はどのぐらい歯並びが小さくなっているのか、実際の写真でみてみましょう。便宜上、歯並びの幅の大小によって、大きく3つのスケールに分類しました。
[図表1]は、昔の日本人に多かった理想のケースです。これをⅠ型と分類しました。
みていただくとわかる通り、歯並びに十分な広さと幅があり、舌がゆったりと過ごすことができます。歯はきれいに直立しており、舌ストレス(舌への刺激)はほとんどありません。
そのため、肩こりや首のこりがあっても軽度の方が多く、大多数の方が治療の必要を認めません。
しかし、このケースは、筆者の患者さんではわずか7%しかいらっしゃいません。
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医療法人健幸会安藤歯科クリニック
院長
1987年 東京歯科大学卒業。
1989年 安藤歯科クリニックを東中野に開院。
1990年 「咬み合わせと全身の関係」の研究を始め、整体・気功・オーリングテストなどを学び、様々な治療法を研究に没頭。
1996年 歯学のみならず医学の視点から「咬み合わせと全身の関係」を追究するため、東京歯科大学の専攻生・社会人大学院生として、微生物・生理学・解剖学・生化学などを学びなおす。
1997年 医療法人社団健幸会設立。
2007年 千葉工業大学・大川茂樹教授とともに、「歯と音声の研究会」を立ち上げる。
2009年9月17日 日本音響学会において、「咬み合わせ治療の発声への影響」のタイトルで日本音響学会に研究発表。(2018年11月現在、5回の発表実績)
2018年 「舌ストレス・頬粘膜ストレス・リップストレス」及び「口腔ストレス症候群」という名称を確立。
2022年9月 日本病巣疾患研究会の学会において、10日口腔ストレス症候群についての特別講演、11日は舌ストレスについてのシンポジウムにて座長を務める予定。
肩こり・首のこりを無くすため、医師・歯科医師だけでなく、患者さんサイドにも、舌ストレスを中心とした、口腔ストレス症候群の概念を広めている。
医療法人健幸会安藤歯科クリニック理事長・院長
厚生労働省研修指導歯科医
全身咬合学会会員
日本音声学会会員
日本音響学会会員
現在、東京歯科大学生理学講座専攻生として在籍中
■安藤正之のYouTubeチャンネル「舌ストレス改善委員会」
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