4人に1人が「入居お断り」の経験あり…住宅難民化する高齢者が増加!?
前出の白書からも分かるように、高齢者の賃貸住まいとして、公営住宅やURは有力な候補です。公営住宅は基本的に国と地方公共団体が協力のうえ、住宅に困窮する低所得者のために用意するもの。UR賃貸住宅はUR都市機構が提供しているもので、なんといっても「仲介手数料」「保証人」「礼金」「更新料」すべて不要というのが魅力です。しかし希望者が多く、入居しづらいといった状況が続いています。
株式会社R65が行った調査によると、高齢者の4人に1人が「不動産会社に入居を断られた」とか。さらに「5回以上断られた」という経験がある人は13.4%にもなるといいます。一方で、そもそも高齢者は賃貸住宅を借りづらいという現状を知っているかどうかの問いに対して、高齢者の35.8%が「いいえ」と回答。気づいた時にはすでに遅し……といった状況なのです。
そもそも賃貸オーナーが高齢者を敬遠するのは、孤独死リスクが大きな要因。死因不明の急性死や事故で亡くなった人の検案や解剖を行っている東京都福祉保健局東京都監察医務院によると、東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数は2020年に4,238人。その数は年々増加傾向にあります
【東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の 自宅での死亡者数】
2011年:2,618人
2012年:2,733人
2013年:2,878人
2014年:2,891人
2015年:3,127人
2016年:3,179人
2017年:3,333人
2018年:3,882人
2019年:3,936人
2020年:4,238人
出所:東京都福祉保健局東京都監察医務院資料より
もちろん、孤独死は持ち家だから、賃貸だから、という問題ではありません。ただひとたび孤独死が発生すると、コストがかさんだり、空室リスクが高まったりするため、賃貸オーナーはとにかく高齢者を嫌がります。
高齢化率、さらに未婚率は上昇の一途を辿るなか、ますます住宅難民となる高齢者は増えていくでしょう。賃貸か持ち家か、結局は好みの問題ではありますが、「一生賃貸」と決めるなら、それなりのリスクがあることは理解しておくことが必要。定年後のそのときになって、「こんなことになるなんて……」と後悔しないためにも、現役時代に対策を講じておく必要があるでしょう。