認知症は、世間一般が考える以上に長い年月をかけて進行する病気です。家族が「何回も同じことを聞く」などの疑わしい症状に気づいた頃には、すでに重症化してしまっていた、ということも珍しくありません。早期発見・早期治療のために、認知症がもたらす症状や兆候を押さえておきましょう。医療法人いくしま医院院長・幾嶋泰郎医師が解説します。
認知症介護の精神的負担を減らすポイント
認知症の介護は精神的負担が大きく、ストレスを感じることも多いと思います。「家族が見なければならない」と自分で負担を大きくしてしまうと、一家心中や殺人、虐待、暴言、暴力などという思わぬ事態を引き起こすことがあります。
家族は本人が元気だったころを知っているので、そこまで戻したいと考えるようです。「あの頃はちゃんとしていたじゃないか」と本人を責めたり、面倒に思ったりする傾向があります。一方、介護スタッフはその人が元気だったころを知らないので、そこに戻そうとは考えません。認知症であることをそのまま受け入れ、どうしたら本人の負担が減り、不安が取れるかを考えます。こういう態度が実はとても重要です。
ひとりで頑張りすぎず、医師やケアマネジャーなど第三者に相談したり、介護保険サービスを活用したりするなど、本人にできるだけたくさんの人が関わるようにし、本来の社会的な絆を復活させながら、介護者に負担がかかりすぎないように気を付けることが重要です。
幾嶋 泰郎
医療法人いくしま医院 院長
医療法人いくしま医院 院長
1955年生まれ。
1980年:川崎医科大学を卒業、母校の外科で2年間の研修。
福岡大学産婦人科で研修。
久留米大学産婦人科で病気発覚。
第一生命保険会社で診査医をしながら学位を取得。
1999年:父の診療所を継承し福岡県柳川市で無床診療所「医療法人いくしま医院」開業。
現在理事長。デイサービス、グループホーム、小規模多機能施設、住宅型有料老人ホームを、スタッフに支えられながら運営。
開業後に漢方に目覚め、柳川漢方研究会(現在、漢方やながわ宿<やど>)を立ち上げ、初心者の育成と自身の研鑚に努めている。
福岡医師漢方研究会所属。趣味は風水と手相。自ら球脊髄性筋萎縮という難病を背負い、60歳直前で両足を骨折し、車椅子で診療を続けている。
YouTube「漢方jp」チャンネルに出演中。
<所属学会>
日本東洋医学会
日本婦人科腫瘍学会
日本産婦人科学会
日本更年期医学会
<著書>
『漢方薬と精神分析』(2021年、たにぐち書店)
【⇒医療法人いくしま医院HP】
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