本記事では、ニッセイ基礎研究所の熊紫云氏が、老後のための資産形成のために何に投資すると良いのか、考察していきます。
老後のための資産形成-確定拠出年金等で老後のために何に投資したら良いのか?外国株式型、国内株式型、バランス型、外国債券型と国内債券型でのパフォーマンス比較 (写真はイメージです/PIXTA)

結論

過去のデータを見る限り、結論として以下のことが言えると思う。

 

〇株式インデックスとしては、米国株(ナスダック100、S&P500、ダウ平均)、米国株が7割以上を占める先進国株(MSCIコクサイ)などをはじめ、収益力、成長力が期待できるインデックスが良い。尚、インデックス投資ではリターンは同様なので、コストが安いものを選ぶべきである。

 

〇長期的な資産形成には一括投資及び積立投資を用いての株式インデックス投資がとても有効であることが分かる。金融・経済危機がいつ起きるか、株価の最安がいつなのかは事前には予測できない。人生100年を豊かにするためのお金を効率良く準備したいのであれば、株価の短期的な値動きに一喜一憂し、試行錯誤を重ねて短期売買するよりも、良い株式インデックスを選んで長期投資をして値上がりを待つ方が堅実である。

 

〇分散投資には、時間分散と資産分散があり、さらに資産分散には、同一資産クラス内の銘柄を分散する銘柄分散と、投資する資産クラスを分散する資産分散がある。当然ながら、投資においては分散投資が重要と言われているため、通常は値動きが違う他の資産クラスへの投資も考えられる。しかし、分散投資には様々な分散効果があり、必ずしもすべての分散効果を等しく活用する必要性はない。

 

最近の傾向として各種株式インデックスの値動きの連動性が高まってきており資産分散投資のメリットは小さく、一方で、国内債券投資は利回りが低すぎるため、投資するメリットは小さい。長期積立投資においては、株式インデックスであれば、十分銘柄分散されている。資金投入時期が分散される時間分散と長期保有のメリットを十分享受できる若い人にとっては、資産分散により価格変動リスクを抑えるメリットは小さく、長期的により高いリターンを得るメリットの方が大きい。

 

〇長期保有と積立時期の分散によって時間を味方にできる年金制度である確定拠出年金においては、投資期間が長い若い人は、資産固定型バランス運用より外国株式など中長期的に高いリターンが期待できる資産クラスにもっと投資すべきであると考えている。もちろん、株式インデックスに長期投資する場合も注意すべき点はある。株価暴落とかのニュースが流れて、資産の時価残高が大きく減少しても、慌てて元本確保型商品などに入れ替え、損失を確定すべきではないということである。一時的に元本が大きく毀損しても、長期的には高い収益率を獲得できる可能性が高いからである。元本確保型商品などに入れ替えて損失を確定してしまうと、高い収益率を獲得する機会を失うことになる。

 

一方、年齢が上がるにつれ、残る投資期間が短くなり、株価が回復するまで待っていられなくなる。残る投資期間が短くなるにつれ、資産分散により短期的リスクを抑える重要性が増えるので、少しずつバランス型に移行するなど、リスクの低いポートフォリオに移行した方が良い。また、資産運用の結果、十分に満足できる老後のための資産形成ができたなら、思い切って全額を元本確保型にするのも良いと思う。

 

老後のための資産形成が十分にできるよう、まずは若いうちに、確定拠出年金等といった税制優遇措置のある制度を活用し、外国株式インデックスなどといった中長期的に高いリターンが期待できる資産クラスに積立投資を始めてみてはどうだろうか。