本記事では、ニッセイ基礎研究所の熊紫云氏が、老後のための資産形成のために何に投資すると良いのか、考察していきます。
老後のための資産形成-確定拠出年金等で老後のために何に投資したら良いのか?外国株式型、国内株式型、バランス型、外国債券型と国内債券型でのパフォーマンス比較 (写真はイメージです/PIXTA)

4つ金融危機直前にバランス型に投資したらいくらになる?

確定拠出年金においては、多くの選択肢の中から自分で運用商品を選び、それぞれの資産の割合、つまり適切なポートフォリオの資産配分を考えなければならない。そこで、過去のデータを用い、実際に投資していた場合のパフォーマンスを確認することで、商品の特徴のイメージを掴んでみたい。

 

確定拠出年金は2001年10月からある制度であるが、日本での過去の4つの金融危機直前に遡って、いくつかのポートフォリオを想定し、毎月2万円を積立投資したら2022年4月末にいくらになったのかを見てみたい。

 

前節に紹介した確定拠出年金専用のバランス型(資産配分固定型)の代表例として、株式インデックス25%・債券インデックス72%・短資3%を組入れる比較的リスクが低い「低リスク型」、株式インデックス50%・債券インデックス47%・短資3%を組入れるある程度リスクがある「中リスク型」と株式インデックス75%・債券インデックス22%・短資3%を組入れる比較的リスクが高い「高リスク型」を想定する。

 

加えて、国内株式インデックス50%・外国株式インデックス50%を組入れる「内外株式型」と「国内債券型」、「外国債券型」、「国内株式型」、「外国株式型」、「米国株式型」それぞれ100%の場合も追加し、合計9種の資産配分で、4つの金融危機直前から毎月2万円を積立投資したら2022年4月末でいくらになったのかについて比較してみた【図表19】

 

[図表19]9種の資産配分

 

結果を確認してみよう。いずれの場合も2022年4月末の最終時価残高は累計積立元本を上回っている【図表20】。積立時間が長ければ長いほど、最終積立金額が大きく、特に米国株式型、外国株式型が9種の資産配分の中では群を抜いて最終積立金額が大きく、資産を大幅に増やしたことが分かる。

 

一番投資期間が長い日本バブル崩壊直前から積立投資を始めた場合、米国株式型の最終積立金額は5,948万円となっており、累計積立元本776万円の7~8倍になっている。外国株式型も4,680万円とおおよそ元本の6倍になっている。その次に内外株式型は2,688万円、高リスク型は1,956万円、外国債券型は1,771万円、中リスク型は1,665万円となっている。日本バブル崩壊から今に至るまで、日本株式の回復が緩いため、国内株式型は1,549万円と2倍程度の最終積立金額にとどまっている。そして低リスク型が1,358万円、国内債券型が1,069万円となっており、資産の増加が比較的小さかった。

 

ITバブル崩壊、リーマン・ショックとコロナ・ショックの直前から投資をした場合、米国株式インデックス、外国株式インデックスといった成長力のある株式型が変わらず最上位となっており、最終積立金額が最も大きかった。

 

次に最終積立金額が大きかったのは外国株式と国内株式50%ずつ組み入れた内外株式型である。バランス型の高リスク型と国内株式型も健闘している。総じて株式型が上位に位置するのに対して、債券型は下位に位置している。資産配分固定型のバランス運用は、株式インデックスと債券インデックスの両方に投資するので、当然中間的な結果となり、株式インデックスの配分が高い方が、上位に位置している。

 

高リスク型は国内株式型と同程度かそれ以上のパフォーマンスとなっている。低リスク型は国内債券型より最終積立金額が大きいが、国内株式型には見劣りする。株式インデックスと債券インデックスの配分が同程度であるので、中リスク型の最終積立金額は高リスク型と低リスク型の中間に位置している。

 

尚、図表20で示しているように、一番投資期間が短いコロナ・ショック直前から2022年4月末までの資産残高の順位は長期期間の結果と同じように見える。しかし、今後株価急落で結果が違ってくるかもしれない。このように短期ではリターンもリスクも安定していない可能性があるので、短期のパフォーマンスで資産配分を決めることは避け、あくまで参考程度と考えた方が良い。

 

[図表20]最終積立金額(2022年4月末時点)