国民の所得に対する税負担・社会保障負担の割合を示す「国民負担率」。2024年度の実績見込みは45.8%でした。コロナ禍以降低下を辿ってきましたが、ここ数年で、社会福祉の手厚いヨーロッパ諸国に追いつく数値に迫っています。少子高齢化社会の実態と合わせて注意が必要です。本稿では、ニッセイ基礎研究所の篠原拓也氏が国民負担率の状況を分析し、現状・課題について詳しく解説します。
国民負担率は45.8%の見込み――高齢化を背景に、欧州諸国との差は徐々に縮小 (写真はイメージです/PIXTA)

国民負担率は、国民所得に対する比率とされることが一般的

国民負担率は、国税や地方税の租税負担と、国民年金や健康保険の保険料などの社会保障負担の合計を、所得で割り算して算出する。所得には、国民所得もしくは国内総生産(GDP)が用いられる。メディアで主に報じられるのは、国民所得を用いた数字だ。

 

広辞苑(第七版)(岩波書店)によると、国民負担率は、「国・地方租税負担と社会保障負担(社会保険料負担)の合計額の、国民所得に対する比率」を意味する。他の国語辞書も同様だ。所得として国民所得を用いた数字が、国民負担率とされることが一般的と言えるだろう。

 

国民所得は、個人が労働によって受け取る給与や報酬、預金や有価証券などから生じる利子や配当などに、企業の収入である企業所得を足し算して計算される。

2024年度の実績見込みは45.8%

国民所得をベースとする国民負担率の、2023年度の実績は46.1%、2024年度の実績見込みは45.8%と示された。前年度に比べて、-0.3ポイント低下と見込まれた。これは、昨年6月に実施された定額減税(納税者と配偶者を含む扶養親族に対して、2024年分の所得税3万円、2024年度分の個人住民税1万円の減税)の影響とみられる。

 

国民負担率の過去の推移を見ると、2020年度には前年度から+3.5ポイントもの大幅上昇となっており、2022年度には過去最高の48.4%となった。それ以降も、40%台後半の高い水準が続いている。

 

国民負担率の変化を、少し長いスパンで10年間の単位で見てみよう。2013年度から2023年度にかけて10年間の上昇は、+6.0ポイントとなっている。その前の10年間(2003年度から2013年度にかけて)の上昇も+6.0ポイントだったため、上昇幅は同じだったことになる。

 

2025年度の見通しは46.2%であり、前年度から+0.4ポイントの小幅上昇とされている。これは、定額減税の影響がなくなるためと考えられる。

 

近年の国民負担率の上昇には、2014年4月と2019年10月の2度の消費税率引き上げや、高齢化に伴う医療や介護などの社会保障負担の増大という背景がある。2022~24年にかけて、1947~49年生まれの、いわゆる団塊の世代が75歳以上となった。その結果、高齢者の医療や介護のニーズは、さらに高まることが予想される。長期的に見ると、国民負担率の上昇圧力は増大していくと言えそうだ。