本記事では、ニッセイ基礎研究所の山下大輔氏が、物価上昇がいつまで続くのか、考察していきます。※本記事「日本の物価は持続的に上昇するか~消費者物価の今後の動向を考える」(22年5月、基礎研レポート)を更新・再構成したものであり、参考文献を含め、詳細は、ニッセイ基礎研究所のウェブサイトに掲載された同レポートを参照ください。
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はじめに
物価は上昇している。消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は、9か月連続で前年比プラスの上昇率となった。4月には上昇率が2%を超えた。2022年中は2%程度の上昇が続くとの予測が出ているところだが、広範な品目の価格上昇を通じて、消費者物価が持続的に上昇する環境に変化するだろうか。物価上昇率に影響を与える景気要因や予想インフレ率などに着目し、日本のこれまでの物価の動向や特徴を踏まえて、考えてみたい。
エネルギー価格上昇は全般的な物価上昇につながるか
景気要因
コロナ禍からの回復過程では、需要増加による需給ひっ迫で消費者物価の上昇圧力に生じることが予想される。
しかし、景気要因の物価への影響度合いは90年代後半以降から弱まっている(フィリップス曲線がフラット化している)とされている。また、日本企業は、供給制約に直面しても、価格引き上げではなく、納期の延長を顧客に提示する傾向が強いとされており(黒田(2021))、その傾向が続く限りは、需給ひっ迫による物価上昇圧力は大きくならないだろう。
エネルギー、円安
現在の消費者物価の上昇は原油等の資源価格高騰による輸入物価上昇に由来する。また、このところの円安は、資源価格高騰の国内エネルギー価格への影響を大きくしている。ただし、資源価格高騰や円安が長期間にわたり大きく進行しない限り、消費者物価への影響は一時的だ。