平均的な給与の会社員だったら…結局、老後30年でいくらの貯蓄が必要?
どのような計算をしたら「2,000万円足りない」となるのかといえば、総務省による『家計調査』をもとにしたもの。このとき参考にしたのは、2017年の高齢夫婦無職世帯の数値で、毎月5万円ほどの赤字になるから仮に30年間夫婦で生きるなら2,000万円ほど足りない=貯蓄を取り崩すしかない、ということになったのです。
ただこの家計調査、年度によって数値は異なります。共に65歳無職夫婦の数値に注目すると、直近の2021年度は毎月1万8,525円の赤字。30年で670万円の貯蓄があればいい計算になります。また調査では年金のほかにも、収入が2万円ほどあるとされていますが、年金以外の収入がないとすれば、30年で720万円ほどの貯蓄がさらに必要になることになります。
【ともに65歳無職の夫婦世帯の家計収支】
■2021年
実収入:23万6,576円(うち公的年金21万5,603円)
消費支出:22万4,436円
非消費支出:3万0,664円
黒字額:▲1万8,525円
黒字額2:▲3万9,497円
■2017年
実収入:20万7,913円(うち公的年金19万1,974円)
消費支出:23万2,541円
非消費支出:2万7,493円
黒字額:▲5万2,120円
黒字額2:▲6万8,060円
※出所:総務省『家計調査』
※「黒字額2」は収入が公的年金だけと仮定した場合の黒字額
またこれらのシミュレーションで想定されているのは、夫は会社員、妻は専業主婦という夫婦。共働きであれば年金額が異なるでしょうから、また老後生活のための必要額は変わってくるでしょう。
では現役時代は平均値通りの給与で、リタイア後は年金だけを手にする夫婦の場合を考えてみましょう。
まずは自営業×専業主婦という夫婦の場合、年金受給額は国民年金だけとなり、夫婦でおよそ月12万8,000円の年金を手にすることになります。2021年度ベースでは毎月12万7,000円の赤字となり、30年で4,600万円程度の貯蓄が必要になる計算になります。
次に会社員×専業主婦という場合。会社員だった夫は16万5,000円、妻は6万4,000円で、夫婦で月22万9,000円の年金を手にすることになります。毎月の赤字額は2万6,100円で、30年で940万円程の貯蓄が必要になる計算です。
そして会社員×会社員という場合、夫は16万5,000円、妻は13万5,000円で、夫婦で月30万円の年金を手にすることになります。毎月、4万5,000円ほど黒字になる計算で、老後のための貯蓄は必要なし、ということになります。
あくまでも統計上の平均値で簡易的に算出したものであり、年金額が変われば、税金などの非消費支出も値も変わるので、今回算出した貯蓄額はあくまでも「たとえば」の話。実際はライフスタイルによって支出額も異なるので、どれほどの貯蓄が必要かは、一人ひとり異なります。
ただしどんなに共働き夫婦であれば年金だけで暮らしていけそう……ということが分かったとしても、老後の安心のためには貯蓄は不可欠。老後資金として多くの人があてにしている退職金は、減少傾向にあり、今後の高齢化の進展により、年金受給額は減少となるといわれています。
いま世間をざわつかせているように、物価・生活費が急上昇することも考えられます。なによりも人生100年時代。老後30年よりはるかに長生きするかもしれません。長生きすればするほどお金が足りない、という事態に陥る可能性は高いでしょう。
ひとついえることは、資産運用には長期投資の効果があるため、できるだけ早くから始めるのがおすすめだということ。そして「自分の場合はどうなのか」という視点で進めていくことが重要です。