銀行員はなぜ「外貨建て保険」を勧めるのか
私たちに身近な銀行。特に高齢者であれば、日ごろから何かと相談をする馴染みの銀行がある人も多いでしょう。
実際、「金融に関する知識・情報の入手先」として最も多いのは「金融機関(窓口、パンフレット、広告、ホームページなど)」で47.3%と半数近くを占めています。また「情報の提供主体としてふさわしい」と考えているのも、「金融機関」が最も多く44.2%。銀行をはじめとした金融機関に、絶対的な信頼を寄せている人が多いことが分かります。
その一方、銀行など金融機関にすすめられて外貨建て保険に加入した加入者による苦情が問題となっています。生命保険協会は『銀行等代理店で発生した外貨建て保険・年金の新契約に関する苦情件数』として、生命保険会社に寄せられた「外貨建て保険・年金に係る苦情件数」について、2014年度から2021年度までの件数を公表。これによると、2014年度の922件から苦情は年々増加。ピークは2019年度でその数なんと2,822件となりました。直近の2021年度は1,375件と、ピーク時の2019年からは半減したものの、1日約3.8件の苦情が寄せられている計算です。
【外貨建て保険・年金に係る苦情件数(件)】
2014年度…922
2015年度…1,239
2016年度…1,665
2017年度…1,888
2018年度…2,543
2019年度…2,822
2020年度…1,866
2021年度…1,375
※出所:生命保険協会『銀行等代理店で発生した外貨建て保険・年金の新契約に関する苦情件数』
ではなぜ多くの苦情を生みながらも金融機関は外貨建て保険の勧誘をやめないのか……その大きな要因のひとつに「手数料の高さ」があります。
たとえば銀行。銀行では基本的に生株を扱っていないため、預り資産として提案可能な金融商品は主に投資信託、生命保険、外貨預金となります。これらの金融商品のなかで、圧倒的に預り手数料を稼げるのが、外貨建て保険というわけです。
ある銀行では、まず外貨建て保険は TTM(対顧客電信相場仲値)に銀行のマージンや利益を含む手数料を上乗せ、差し引いたレートであるTTS、TTBが手数料となります。次に投資信託の手数料はゼロから高くても3%程度。そして外貨建て保険は、高いものだと6〜7%の商品があるのです。なかには、販売可能な金融商品で手数料が高いものから順に羅列したオリジナルのリストを作成、共有している銀行員もいるというから驚きです。そのリストの上位は、当然外貨建て保険が占めています。