持ち家率は変わらないが、住宅購入の年齢は上昇している
5年に1度行われる総務省『住宅・土地統計調査結果』の最新調査(2018年)によると、日本の持ち家率は61.2%。持ち家志向が低下しているといわれていますが、過去40年ほどの推移をみてみると、常に持ち家率は60%前後で、賃貸住宅は40%弱で推移していますので、日本人の志向に大きな変化はみられない、というのが正解でしょうか。
ただ年代別にみていくと、20代後半の持ち家率は、40年前は28.1%だったのが、最新調査では9.1%までに減少。30代も40年で16%ほど減少しました。
その要因として考えられるのが、ライフスタイルや働き方の変化。以前は30歳前に結婚し、マイホームを買い、定年前に完済する、というのがスタンダードでした。しかし晩婚化、さらに最近は、65歳、さらには70歳まで働く人も増え、全体的にマイホーム購入が後ろ倒しになっているのです。
国土交通省『令和3年度住宅市場動向調査』によると、住宅購入時の世帯主の平均年齢は、たとえば新築分譲マンションで39.5歳。40歳前後でマイホーム購入を検討するのが一般的になっています。
人生三大出費に数えられるマイホームですが、何千万円もするものなので、住宅ローンを活用するのが一般的。同調査で分譲マンション購入者のお金まわりについてみていくと、平均して3,000万円30年強の住宅ローンを利用し、マイホームを実現していることがわかります。
【新築分譲マンション(一次取得者)の購入資金とローンの平均】
・購入資金:4,674万円
・自己資金比率:30.8%
・住宅ローン:3,337万円
・返済期間:32.0年
・年間返済額:137.2万円
・返済負担率:19.0%
・ローンタイプ(上位3タイプ)
・変動金利型:88.3%、固定金利期間選択型(10年超):4.9%、全期間固定金利型(10年超):1.9%
出所:国土交通省『令和3年度住宅市場動向調査』より
また頭金として、物件の3割近く用意するのが一般的。ただ新築マンションの平均価格は高騰し、首都圏では6,000万円、東京23区では8.000万円を超えるといわれているなか、頭金を用意するころには、買い時を逃してしまう……そんな懸念があります。
平均頭金、物件の3割…フルローンで東京のマンションを買うと
マイホームの買い時を逃したくない……そんな思いに応えるのが、フルローン。その名のとおり、全額ローンで住宅を購入するというものです。
最近は、金融機関の間で競争が激しくなっていることなどから、ネットバンキングを中心に、フルローンでもOKというところも増えています。
仮に、東京の8,000万円の新築マンションを、平均的なカタチでローンを利用した場合と、フルローンを活用した場合の返済プランを比較してみましょう。返済方式:元利均等、金利:1.0%、返済期間:32年と同じ条件とします。
まず自己資金比率3割の場合、借入は5,600万円となり、利息分は945万9,966円で総支払額は6,545万9,966円。月々の返済額は17万0,469円となります。一方、フルローンの場合、利息分は1,351万4,360円で総支払額は9,351万4,360円。月々の返済額は24万3,527円となります。自己資金3割と、フルローン。月々の返済額の差は7万3,000円ほどです。
仮に東京在住の一般的な会社員がフルローンで平均的なマンションを購入するというのは現実的なのでしょうか。
厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、東京の40代前半・男性会社員の平均月収(手当等込み)は46万3,200円。手取りは35万円ほどです。そこから24万円が引かれ、残り11万円ほどで家族を養う……片働きでは、少々厳しいものとなりそうです。
一方、従業員1,000人以上企業にしぼってみていくと、平均月収は50万1,000円。手取りにすると37万円ほど。大企業勤務の会社員の場合、生活費は月に13万円ほど。2万円の余裕が生まれたとはいえ、まだまだ家計は厳しく、やはり共働きであることは必須だといえそうです。
確かに、フルローンを利用すれば頭金を貯める期間を省くことができ、「これぞ!」という物件が巡り合ったときに買い逃すことはありません。ただそのあとの家計は、かなり苦しいことになるでしょう。
「うちは共働きだから大丈夫」
そういう人も多いでしょうが、もし病気や怪我などで、一方の収入が途絶えたとき、家計は一気に破綻します。もちろん、それは住宅ローンを利用している限り、多かれ少なかれ、誰もが抱えるリスクです。ただフルローンの場合、その危険性はかなり高い、ということを肝に銘じる必要があります。
買い時を逃さないということも重要ですが、きちんとローンを返済していく見通しがたつ、ということのほうが、結果的に、家族の幸せにつながるのではないでしょうか。