大学進学時に奨学金に助けられたという人は多いでしょう。ただ卒業後、給与がまだ少ないなか、返済していくのは大変なこと。なかには月々の返済の目途も立たないような状況下にいる人たちもいます。奨学金返済の実情をみていきます。
手取り18万円…「奨学金、月1万円の返済もツライ」大卒・非正社員の悲劇 (写真はイメージです/PIXTA)

奨学金延滞者…月にいくらなら返済できる?

厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、大卒・非正社員の平均月収は27万円、手取りにすると21万円、賞与も含めた推定年収は381万3,500円です。

 

さらに給与分布をみていくと、中央値は22万9,800円、手取りにすると18万円と20万円を切ります。推定年収は312万円ほどで、300万円を少し上回る程度です。

 

上位10%で月収41万3,100円、上位25%で29万8,200円。一方、下位25%で17万0,700円、下位10%になると、15万0,900円。手取りわずか12万円です。この水準になると、どんなに頑張っても、奨学金の返済は難しくなってくるでしょう。

 

【大卒・非正社員の月額給与分布】

  • 10万円未満:0.10%
  • 10万~12万円未満:0.50%
  • 12万~14万円未満:1.90%
  • 14万~16万円未満:6.60%
  • 16万~18万円未満:10.90%
  • 18万~20万円未満:11.60%
  • 20万~22万円未満:12.90%
  • 22万~24万円未満:10.50%
  • 24万~26万円未満:9.20%
  • 26万~28万円未満:6.20%
  • 28万~30万円未満:5.00%
  • 30~40万円未満:13.60%
  • 40~50万円未満:5.20%
  • 50万円~:5.80%

出所:厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』より算出

 

こんな彼らが無理なく返済できる奨学金は、どれくらいなのでしょうか。延滞者で最も多いのが「5,000~1万円」。「5,000円未満」が続きます。月々1万円……それを捻出できないほど困窮し、奨学金の返済を延滞せざるを得ない、というのが現状のようです。

 

【奨学金返済延滞者、返済可能額】

  • 5,000円未満:22.4%
  • 5,000~1万円:38.7%
  • 1万~1.5万円:15.5%
  • 1.5万~2万円:11.5%
  • 2万円以上:12.0%

 

昨今の物価高。平均的な給与の世帯でも、日に日に家計が厳しくなっていますが、毎月、奨学金の返済に追われている人たちは、さらに厳しい状況にあるでしょう。

 

岸田文雄首相は、ロシアのウクライナ侵攻による物価高を「有事の価格高騰」とし、「物価・賃金・生活総合対策本部」を設置。政府対策本部を置いて断固として国民生活を守り抜く」と訴えました。果たして、奨学金の返済に延滞するしかないような人たちも守ることができるのか。動向に注目です。