生活が苦しい…賃金4ヵ月連続プラスも「実質賃金」は下落
厚生労働省『毎月勤労統計調査』によると、労働者1人あたりの4月分(速報値)の現金給与総額は28万3,475円と、4ヵ月連続でプラス、前年同月比と比べ1.7%の増加となりました。また残業代などの所定外給与は1万9,924円と、前年同月比5.9%の増加で、こちらは13ヵ月連続でプラス。コロナ禍から徐々に企業活動が戻りつつあるようです。
一方で、賃金が実際の社会でどれだけの物品購入に使えるかを示す実質賃金は、前年同月比1.2%減。一昨年の平均を100とした際の指数は87.5となりました。賃金はコロナ禍からの回復で上昇基調ですが、それ以上に物価の上昇率は大きく、家計の負担が増していることがわかります。
【実質賃金指数の推移】
- 2021年4月:88.6(2.9 %)
- 2021年5月:86.8(3.1 %)
- 2021年6月:139.9(0.5 %)
- 2021年7月:117.1(1.0 %)
- 2021年8月:86.6(1.1 %)
- 2021年9月:84.7(0.0 %)
- 2021年10月:85.3(0.1 %)
- 2021年11月:88.7(0.1 %)
- 2021年12月:171.2(▲1.3 %)
- 2022年1月:86.0(0.5 %)
- 2022年2月:83.8(0.0 %)
- 2022年3月:89.5(0.6 %)
- 2022年4月(速報値):87.5(▲1.2 %)
出所:厚生労働省『毎月勤労統計調査』より
※2021年平均を100とした場合
※(かっこ)内前年比
20年前と変わらない日本人の平均給与…年代別にみていくと
日本人の給与が上がらないのは、いまに始まったことではありません。国税庁『民間給与実態統計調査』によると、2020年の日本人の平均給与は433万円。男性会社員だけに限ると532万2,000円。一方、日本のサラリーマンの平均給与で最高値を記録したのは1997年で577万円。その後、不良債権化問題で日本中が揺れた2000年を前後して下落の一途を辿り、リーマンショックによりどん底まで下落します。その後、アベノミクス効果により上昇基調となりますが、いまなお、リーマンショック前の水準にしか戻っていません。
年齢別にみていくと、1990年比、「25〜34歳」と「50〜59歳」は100%を超えていますが、「20〜24歳」と「35〜49歳」は100%を下回っています。
【2020年の平均給与、対1990年比】
- 20~24歳:95.1%
- 25~29歳:104.4%
- 30~34歳:100.4%
- 35~39歳:98.1%
- 40~44歳:95.6%
- 45~49歳:95.8%
- 50~54歳:101.2%
- 55~59歳:113.6%
国税庁『民間給与実態統計調査』
注目すべきはすべての年齢で1990年比100%を下回る40代。この年代はひと際、給与の下落幅が大きく、また回復スピードも遅れています。
この40代は、いわゆる氷河期世代。厚生労働省によると、1993年頃から10年ほどの間に就職活動が重なった人たちを指すとされ、40代はまるまるこの時期に重なっています。大卒であっても就職が決まらず、不本意な就職をしたり、非正社員として社会に出て、そのまま正社員になれずに現在に至る人たちが多い世代です。
当然、ほかの世代よりも給与面で厳しい人たちが多く、前出の結果に繋がっていると考えられるのです。