世界の「ワクチン格差」がもたらすもの
WHOは6月までにすべての国でのワクチン接種率の目標を70%に設定しています。しかし、アフリカ諸国でのワクチン2回接種率は2022年4月末で14.3%に留まっており検査場、接種会場の設置が難しいことが指摘されています。
RNAワクチンは冷凍保存が必要であり、解凍後に接種を速やかに行う必要がある為、管理・接種に関わるスタッフの教育も重要になります。
HIVの場合、未だワクチンも完治できる治療薬もなく世界中に3,700万人以上の患者がおり、特にアフリカの患者数が2/3以上を占めています。こうした各国間の医療資源の大きな格差は不完全な治療を招き、個人の生命に関わるだけでなく新たな変異株を出現させる温床にもなります。
従ってこのようなアフリカの医療問題は決して対岸の火事ではなく、今後新型コロナウイルスパンデミック終息のカギになるといえます。また、国内でこうした格差を生み出さない努力も必要となります。
今回は欧米諸国の「マスク疲れ」、「ワクチン疲れ」についてお話しましたが、世界にはワクチン供給が十分でない国も多い状況です。
現在流行しているオミクロン株の系統はアメリカや日本ではBA2系統、特にBA.2.12.1ですが、南アフリカではより感染力が高いと予想されるBA4やBA5系統が流行しており、医療格差による影響も否定できません。
日本でもこれらの変異株の流行が危惧されていますが、現在のグローバル社会で「もの」や「人」の移動を無くすことはでません。
ウィルスにワクチン未接種の集団とワクチン接種済みの集団の行き来でさらに強力な変異を獲得させないため、感染拡大予防が重要となります。
そして日本は、ウイルスの輸入だけでなく「輸出させないこと」にも気を配る必要があります。ワクチン接種やマスク使用がかなり容易な国で、さらに個人の取り組みが地球規模の効果をもたらすと考えると、マスクやワクチンへのハードルは高くないのではないでしょうか。
郭 悠
ダナ・ファーバー癌研究所
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