ローンを活用してマイホームを実現する場合、頭金を入れるのが一般的ですが、なかには「全額ローン」というケースも。そこには物件の買い時を逃さないというメリットがある一方、返済負担が増えるというデメリットも。しっかりとしたシミュレーションのもと、全額ローンを利用しているのであればいいのですが、そうでない場合、悲惨な末路を辿ります。みていきましょう。
全額ローンで住宅購入…重すぎる「毎月の返済額」に「65歳でも仕事を辞められない」会社員一家のツライ現実

全額ローンで住宅購入した場合の返済額…老後も払い続けられる?

前出の国土交通省調査の平均値のマンションを購入する場合を考えてみましょう。仮に当初5年間の金利が0.6%、以降が1%だとすると、利息分は446万1,928円、総支払額は3,496万1,928円。月々の返済額は5年目までは8万8,572円、以降は9万3,231円となります。

 

これが全額ローンだとすると、当初5年の返済額は13万4,718円、以降は14万1,803円となります。マンション購入者の平均世帯年収は798万円なので、平均的な返済プランでは、返済負担率は14%でしたが、全額ローンの場合は21%程度になります。その分、家計に負担がかかるということです。

 

——全額ローンで家計に負担はかかるけど、理想のマンションが買えてよかった

 

そう思っている人も多いことでしょう。ただ平均30年を超える返済期間は、十分に留意しておく必要があります。

 

総務省『家計調査』によると、65歳無職夫婦のみ世帯の住宅費を除く消費支出は平均19万9,749円。毎月の赤字額は1万8,525円になります。そんな家庭の住居費は1万6,498円です。

 

そんな老後の生活に、毎月14万1,803円のローン返済がのしかかるとすると、どうでしょう。毎月の赤字額は12万5,000円程度。年金ではまかないきれず、貯蓄から取り崩す金額が、年間150万円程度になる計算になります。

 

貯蓄を取り崩してローンを返済するのが難しいのであれば、年金世代になっても、働き続けるしかありません。現役を続行して、70オーバーで住宅ローン完済となったら、仕事を辞められる……そうとは限りません。ローン返済を続けながら、老後を見据えた貯蓄ができたのであれば、仕事を辞めればいいでしょう。しかしそれが難しかったのであれば、年金生活の毎月の赤字は補填できません。それゆえ、ローン完済後も引退することはできないでしょう。

 

あくまでも最悪に近い話ではありますが、全額ローンで住宅購入の場合、「一生働き続けなければならない」というリスクが高くなることを考えておく必要があります。

 

理想は、年金生活に入る前に住宅ローンは完済し、なおかつ、老後を見据えた貯蓄も十分という状況を形づくる返済プラン。全額ローンを利用するにしても、年金生活前に完済が可能か、しっかりとシミュレーションしておくことが大切です。