2通りの手術…それぞれの「メリットとデメリット」
骨切り術と人工股関節置換術には、それぞれ、次のようなメリットとデメリットがあります。
骨切り術のメリットとデメリット
【メリット】
・自分の股関節を温存できるため、基本的に脱臼する心配がない
・日常生活に制限がなく、スポーツも自由に行える
【デメリット】
・入院期間が長く、1〜2か月は必要
・リハビリ期間も長い。社会復帰まで3~6か月程度かかる
・手術後の痛みが強い
人工股関節置換術のメリットとデメリット
【メリット】
・入院期間が短く、1〜3週間で退院できる(病院により入院期間が異なる)
・リハビリ期間も短く、1~3か月くらいで社会復帰できる(ただし、運動療法は継続する必要がある)
・股関節の可動域が手術前よりも増え、生活レベルが上がる
・手術後の痛みが少ない
・両脚の長さに差異がある場合はそろえることができる
・左右の股関節に異常がある場合は、両脚同時に手術を行える
【デメリット】
・人工股関節の寿命により、将来的に再手術の可能性がある
・激しい運動や労働など、股関節に負荷のかかる動きはNG(重労働やコンタクトスポーツなど)
人工関節の「寿命」…医療技術の進歩とともに長寿化
骨切り術は、自分の股関節を温存することができるというメリットがあり、20代や30代の若い患者で、症状が初期の場合にはこの術式が採用されることがあります。しかし、社会復帰までの時間が長く、体に対する侵襲性を考えると、人工股関節置換術に軍配が上がります。
かつては、人工股関節の寿命は10~15年程度といわれており、40代や50代で手術をすると、将来的に再手術が必要になることも少なくありませんでした。
しかし近年では、人工股関節の技術も進化し、耐久性の優れたものも増えており、人工股関節が20~30年以上機能する可能性が期待できます。50歳程度で人工股関節へ置換すれば、生涯、再手術をしなくてもずっと使用できるというケースも少なくありません。
人工股関節置換術は、非常に高度な技術を必要とする手術ですが、整形外科で行われる手術のなかでも、患者さんからの満足度が高い手術のひとつといわれており、実際、9割以上の方が術後に満足していると回答されています。
塗山正宏
世田谷人工関節・脊椎クリニック