「保存治療」は、あくまでも急場を凌ぐ対症療法
すでに変形性股関節症を発症している、または、進行してしまっている人の場合は、さらなる進行を防止するために保存治療を行います。しかし保存治療は、変形性股関節症を根本から治癒する「根治療法」ではなく、痛みを軽減したり病状の進行を遅らせたりする「対症療法」です。
「手術をできるだけ先延ばしにしたい」「手術は受けたくない」という人で、「まだそれほど症状が進んでいない」という場合には、保存治療で対処できますが、結局のところ、手術を先延ばしにしているに過ぎず、「いつかは手術を受けなければならない」という状態になることも少なくないのです。
保存治療をして、痛みをコントロールできたり、動きに困難がなくなったりしたら、手術治療を行う必要はありません。しかし、「痛みがなかなかおさまらない」「歩きづらさが増している」という人は、進行期から末期へ移行していることが考えられます。この場合には、保存治療ではなく、手術治療が適用になります。
痛みがなかなかひかない「進行期」以降は手術治療
変形性股関節症は、初期、進行期、末期と進んでいきます。末期になると、関節の軟骨がほとんどなくなくっている状態で、関節の隙間がなくなるため、股関節の著しい変形が起こります。
その結果、極度の痛みに襲われるだけでなく、筋力が低下したり、左右の脚の長さが違ってしまったりすることもあります。この時期になると、「手術治療」が標準的に行われます。
年齢や進行具合によって手術の方法が異なる
変形性股関節症の手術治療には、主に2つの方法があります。それぞれ適用となるケースや特徴が異なりますが、現在では、人工股関節置換術が多く行われています。
(1)骨盤骨切り術
骨の一部を切り取って関節の構造を変化させることで、症状の改善を目指す手術です。骨盤の骨を切る方法は症例によって異なりますが、多くの場合、寛骨臼の骨をドーム状に切ってスライドさせ、大腿骨頭を正常におおう手術が行われます。これにより、関節の荷重面が増え、負担を軽減するのが狙いです。
(2)人工股関節置換術
人工の股関節に置き替える手術を人工股関節置換術といいます。人工股関節は、金属製のカップ、骨頭ボール、ステムで構成されており、カップの内側には、軟骨の代わりをするライナーをはめこみます。つまり、骨頭ボールがライナーにすっぽりはまることで、滑らかな股関節の動きが再現できるという仕組みです。
このように、変形性股関節症の場合に行われる手術には2通りの方法がありますが、現在、主流となっているのは人工股関節置換術です。