コア・コンピタンスとして航空機事業を選択
筆者は長年、伊藤忠商事で、中長期の事業戦略を担う「総合開発本部」に籍を置き、戦略的な仕事をしてきました。とりわけ当時は、日本が世界に誇った船舶の建造・輸出、さらに日本では製造すらしていなかった航空機の輸入・販売を積極的に行ってきました。
その後、パリに駐在し、さらにチュニジア事務所長として、自動車、建設機械、通信設備、肥料・セメント工場など各種プラントを幅広く手掛けてきましたが、32歳で伊藤忠商事を円満退職し、北アフリカのチュニジアで、今のITCを創業しました。
独立当初は、中近東・アフリカ諸国向けビジネスコンサルタントとして、日本の有力企業である川崎重工、日立造船、小松製作所、伊藤忠、三井物産などと一緒に仕事をしましたが、日本に仕事の拠点を移そうと考えた時に、徐々に仕事の範囲を絞り込もうと考えました。今でいうコアコンピテンスです。
コアとなる主力事業に特化し、深く掘り下げた仕事、そして、その業界で不動の地位を確立することが事業の成長・繁栄に必要と考え、伊藤忠商事に入社以来、ずっと手掛けて来た『航空機事業』に特化することを決意しました。
財務・税務戦略の一環として高収益企業が投資
航空機のビジネスに特化しようと思った理由は、航空機には以下に挙げるような強みがあり、そこには圧倒的な将来性があると考えたからです。
①航空機は、誰でもが買えるものではない。そこには、限定された市場があり、限られた専門家が、航空機を取り扱い、ルフトハンザ、カンタス、シンガポール航空などの航空会社・運航会社が買い手として特定できる。
②航空機は、固定翼機(セスナ機やボーイング、エアバスといった旅客機)と回転翼機(ヘリコプターと言われ、ドクターヘリ、消防・防災ヘリ等)に分かれ、限られた地域と分野の需要に根ざし、安定した運用がなされる国際的な優良資産である。
③航空機は、常に時代の最先端を行く超ハイテク技術を駆使して、人を乗せて安全を担保して空を飛ぶ使命を持った動産で、常に厳しい整備をすることで、陳腐化が他の商品、とりわけ動産の中では、極めて少ない商品である。
④限定した機種でありながら、世界規模で市場が存在し、常に売り買いが行われている透明性の極めて高い商品で、不動産とは極めて対象的である。何と言っても、より優利な市場で、機体が、世界中を飛び、自ら高い価格で転売が行える。
⑤航空機事業は国が管理し、航空機も耐空証明制度の下で、中古と云えども新品同様な飛行性能を有する義務があり、航空会社は大変大きな資金を厳しい保守と整備に費やして航空機・ヘリを運用している。
⑥また、法定償却年数が5年から10年と短いにも拘らず、経済耐用年数は、30年~40年と長いことから、リース事業資産、或いは、償却資産として世界の富裕層や投資家、さらには、高収益企業が、財務・税務戦略の一環として積極的に投資をしている。
本連載では、こうした航空機・ヘリコプターのリース事業投資の魅力をテーマごとに解説をしていきます。