年金が頼りの高齢者…離婚後も住宅ローンが残っていたら
離婚した夫婦の6%が夫婦を30年以上続けての離婚。20年前は離婚した夫婦の3.9%でしかなかったので、長年連れ添った夫婦、いわゆる熟年離婚は急増しているといっていいのかもしれません。
ちょうど、結婚し、子育てもひと段落、定年を機に……そんなところでしょうか。ただ昔であれば「離婚して身軽になって悠々自適な老後生活」が可能でしたが、いまはそううまく行かないケースが増えているようです。
前出、国土交通省の調査からも分ける通り、マイホームの実現は40歳前後、返済期間は30年強。つまり30年連れ添ったパートナーと別れても、あと10年ほどは住宅ローンが残っているわけです。
もし平均的な新築マンションをローンを活用して購入したとしましょう。当初5年金利を0.6%、以降は1%と仮定すると、月々の返済額は当初5年は8万8,572円、以降は9万3,231円となります。離婚時、現役であれば月々9万円強の返済はそれほど問題はないかもしれません。問題はリタイアし、年金生活に突入していたら……。
厚生労働省の調査によると、平均的な会社員世帯の年金受取額は夫婦で21万円、会社員ひとりであれば14万円。離婚後、独り身となった際、ローンを払うと残り4.5万円ほどという計算。かなりカツカツの生活です。さらに非名義人が住み続けたいという場合や、ペアローンの場合は「返済そのものをどうするか」ということでも揉めに揉めること間違いありません。
売却というケースはどうでしょうか。その場合、売却額より残債が少ない「アンダーローン」であることが理想的。残った分を財産分与の対象にして元夫婦で分ければ終わりです。残債が多い「オーバーローン」の場合はやっかいです。住宅ローンが残っている状態では抵当権を外すことができないので、基本的に売却はできません。
「家の売却額と自己資金を使って完済」、「任意売却を活用」といった選択肢が考えられますが、もし住宅ローンが滞納状態となりそれが続くと「競売」で強制的に家を売却する事態に。その場合、市場価格の6割程度でしか売れず、しかもローンの返済義務はそのまま。まさに踏んだり蹴ったりといった状況に。
住宅ローンがあるのに熟年離婚。このようなケースは年々増加し、返済に行き詰まり自己破産を迎えるケースも珍しくありません。
——熟年離婚なんてありえない
多くの人はそう考えているでしょう。しかし実際に熟年離婚に至り、ローン地獄に直面している人もそう思っていたに違いありません。万が一のことを考えておいて、損はありません。