日銀・黒田総裁、任期はあと1年…金利上昇はある?
しかしここにきて、住宅ローン破綻が急増するのでは、という懸念が強まっています。
その理由のひとつが金利上昇。現在の住宅ローン金利は、日銀のマイナス金利政策を受けて、過去最低水準をキープしています。しかし日銀・黒田総裁の任期が1年を切り、超低金利時代は終焉を迎える、という主張が強まっているのです。
ただ景気への影響が大きいことから「急激な金利引き上げはない」というのが大方の見方。また銀行間の競争が激化していることもあり、金利を上げづらい状況は今後も継続するといいます。
とはいえ世界情勢に引っ張られ、徐々にではありますが、金利は上昇基調に転じています。いまや超低金利に慣れ切ってしまった日本人。金利が当たり前の諸外国に比べて、耐性がほぼありません。少しの金利上昇にも対応できず、苦境に陥る人が急増するだろうと懸念されています。
もう一つ、長期的な視点では、ライフスタイルの変化により、住宅ローン破綻、特に高齢者による破綻が急増するといわれています。
1970年代、初婚年齢は男性27歳、女性は24歳ほどでした。それから40年、男性は31歳、女性は29歳と、4~5歳ほど年齢が上がりました。それに伴い、住宅取得のタイミングも後ろへとズレています。さらに住宅ローンの返済期間も少しずつ長くなっています。国土交通省の調査によると、返済期間が35年を超えるのは7割弱。40代で住宅購入、完済は75歳を超えるというケースは珍しくありません。
一方、わたしたちの給与事情は、年々、厳しい状況となっています。以前は歳を重ねるごとに給与は増えていくのが当たり前でしたが、終身雇用や年功序列が崩壊したといわれているなか、給与が増えていくことを前提とした返済シミュレーションは成り立ちません。
また今までは60歳で定年が当たり前でしたが、現在は、65歳、さらには70歳まで雇用を約束する企業も増えています。60代、70代で住宅ローン返済が当たり前の時代、長く働けることは良いことではありますが、そこにも落し穴があります。
多くの企業は定年年齢は60歳のままで、雇用形態を変えて働き続けることができる、という方法を採用しています。その際、定年を機に大幅に給与減。平均は定年前の7割程度になります。定年後に返済負担率が急激に上昇し、家計が耐えきれずに破綻……そういうケースは高齢化とともに急激に増えていくだろうといわれているのです。
もし住宅ローンが払えなくなると、どうなるのでしょうか。一般的には滞納から1ヵ月で「督促状」が届き、滞納から6ヵ月で「期限の利益の喪失(=分割で返済する権利を失う)」、滞納から8ヵ月で「差押え通知書」が届き、物件は競売へかけられることになります。
住宅ローンで破綻する人たちは、コロナ禍のように不測の事態に直面して、という人はもちろん、多くが最初の契約の際の甘い見通しが原因であることが往々にしてあります。毎月の返済額だけを見て、長期的な視点がなかった人。住宅ローンにどのようなリスクがあるのか、確認しなかった人……。
夢のマイホームが競売にかけられることのないよう、何度もシミュレーションを行い、綿密かつ堅実な返済プランを最初に立てることが、ローン破綻を回避する有効な方法です。