厚生労働省の調査では、元会社員だった人の平均年金額は14万円。しかし、そのすべてが生活費として使えるかといえば、そうではありません。年金から引かれる税金や保険についてみていきましょう。
夫婦で20万円だが…税金や保険料が引かれて残る「ほんとの年金額」

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ちょうど真ん中の会社員…年金生活者の税金

厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』によると、大卒男性の基本給は、中央値で33万5,900円、推定年収は503万円ほどになります。

 

将来もらえる年金額は、以下の計算式で簡易的に求めることができます。仮に、社会員人生トータルの平均が上記の中央値だとして考えてみると、国民年金(2021年度、満額保険料の場合、年額78万0,900円、月に6万5,075円)と合わせて、月々14万円程度になります。

 

■加入期間が2003年3月まで

平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数

■加入期間2003年4月以降

平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数

 

厚生労働省『令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金保険(第1号)の平均年金受給額は月額14万6,145円、国民年金は月額5万6,358円でした。上記の条件では、平均を少々下回る年金額となります。

 

もし大卒会社員と専業主婦という組み合わせの夫婦の場合、月々20万円ほどの年金を手にすることになる、ということです。

 

――20万円、結構シビアだな

 

そう思われるかもしれませんが、年金は所得税法上「雑所得」に分類され、所得税や復興特別所得税(2013年2月から2037年12月までに支払われるべき年金が対象)が課せられます。年金まるまる生活費だと考えている人は多く、意外な盲点です。実際にどれくらいになるのか、前出の大卒会社員と専業主婦、という組み合わせの場合を考えてみましょう。

 

まず65歳未満であれば60万円、65歳以上であれば110万円の「公的年金等所得控除」が受けられます(図表)

 

【図表】公的年金等に係る雑所得の速算表

 

さらに誰でも無条件に受けることができる「基礎控除」48万円と合わせると、65歳未満であれば108万円未満、65歳以上であれば158万円未満であれば、所得税はゼロになります。さらに今回の事例であれば、配偶者控除も受けられ、実質、所得税はかかりません。

 

ほかにも年金生活者でも月々国民健康保険は払っているでしょうから「社会保険控除」は受けられますし、医療費控除、生命保険控除など、対象となっていれば受けることができます。「平均的な会社員でした……」という人であれば、年金生活で所得税はかからない可能性が高いといえそうです。

 

続いて住民税。こちらも「公的年金等所得控除」「基礎控除」「配偶者控除」「社会保険料控除」と引いていくと、課税される所得金額はゼロ。住んでいる市区町村によって事情は異なりますが、所得税同様、住民税も非課税になるケースがほとんどでしょう。