「早期治療」が合併症と死を防ぐワケ
イギリスの研究が示した「早期治療の効果」
次に紹介するのは、1970年代に英国で行われた「英国での糖尿病の経過研究(UKPDS)※3」です。
この研究では、もうすでに糖尿病と診断されてしまっているとしても、早期の治療(運動、食事、薬)で、深刻な目、神経や腎臓の合併症(糖尿病性網膜症、神経障害、腎症)や心筋梗塞・脳卒中の発症率を低く抑えられるという結果が出ています。3,367人の「新たに糖尿病と診断された人」達を2つのグループに分け、観察しました。
第1グループの人達には食事・減量の指導のみを、第2グループには食事・減量の指導に加え、経口薬かインスリン注射できっちりと厳格な治療を行いました。
結果としては、もちろん熱心に治療をしたグループのほうが効果が大きく、10年間に及ぶ研究期間中の血糖値は予想通り、第2グループのほうが大幅に低値でした。そして合併症の発症率についても然りでした。
しかし、これは誰もが予測できたことです。実はこの研究の凄い点はここではなく、注目すべきはこのあとさらに10年間(11年目〜20年目)の観察を続け、次のような衝撃的な結果を明らかにしたことです。
まずは11年目の頭に第2グループの患者を厳しく縛り付けることを止め、通常の食生活と通院の生活に戻してみました。そうしたところ、すぐに第2グループの血糖値は上がりはじめ、あっという間(最初の1年以内)に第1グループと同じになってしまったのです。
そしてその時点から10年間は第1グループと第2グループの血糖値の差は無いままで経過しました。
ということは、普通に考えれば、両グループの合併症の発症率と死亡率も大体同じになってしまいそうなものです。
しかし予想に反し、なんと観察終了の20年目において、合併症の発症率と死亡率の結果は依然第2グループの方が大幅に低かったのです。この結果は多くの研究者を悩ませました。
「11年目から20年目はグループ間の血糖値の差は無かったのに、なぜ合併症発症率は第2グループが低いままなのか?」と。
血糖値が高い期間に、血管に有害な堆積物ができてしまう?
理由はいまだに解明されていませんが、有力な説は、「血糖値の高い期間が長いと動脈硬化を起こす堆積物ができてしまい、合併症の原因になるのでは」というものです。
よって第1グループは最初の10年間で血管に堆積物が蓄積してしまっており、一方第2グループは最初の10年間で蓄積がなかったため、その後もグループ間の合併症の発症率に差ができてしまったのだと推測されています。
ただ理由はどうであれ、この研究からは、早期にきっちり治療をすれば、たとえ糖尿病が長く続くとしても合併症の発生や死亡率は低く抑えられるということがわかったわけです。
これは「Legacy Effect」と呼ばれている現象で、医師の間ではよく知られています。
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