繰り上げ返済で「住宅ローン返済期間」が30年→20年に。しかし…
住宅ローンを抱える人たちが金利上昇に直面しているなか、実際にどのように対応しているのでしょうか。
変動型の住宅ローンを利用している人で最も多いのが「返済の目途や資金余力があるので返済を継続」で30.8%。続いて「返済額の圧縮、あるいは金利負担軽減のため一部繰り上げ返済」が25.7%。「金利負担が大きくなれば全額完済」が14.1%。「検討がつかない」という人も20.0%いました。
一方、固定期間選択型では、「一部繰り上げ返済」が最も多く28.1%。「検討がつかない」が23.7%、「返済継続」が22.2%、「全額完済」が17.3%となっています。
このような局面で繰り上げ返済を選択する人は多いようです。繰り上げ返済には大きく、返済期間が短くなる「期間短縮型」と、毎月の返済額が少なくなる「返済額軽減型」の2つのタイプがあります。どのタイプを選択できるかは、金融機関によって異なります。
繰り上げ返済の効果をシミュレーションしてみましょう。国土交通省『令和2年度住宅市場動向調査』によると、新築分譲マンションの購入者の平均年齢は43歳。3,000万円30年ローンを活用して夢のマイホームを実現しています。
【新築分譲住宅(マンション)購入者の平均像】
世帯平均年収 798万円
世帯主平均年齢 43.5歳
購入資金 4,639万円(うちローン3,050万円)
平均返済期間 31.5年
出所:国土交通省『令和2年度住宅市場動向調査』より
仮に以下の条件で借入をしているとしましょう。月々の返済額は当初5年は91,926円、5年目以降は96,491円となります。
借入金額:3,000万円
返済方式:元利均等
金利:当初5年間年利0.6%、以降は1.0%
返済期間:30年
もし2年おきに100万円の繰り上げ返済をし、期間を短縮する場合、返済回数は240回に。10年の短縮となり、返済終了は63歳と、年金受給が始まる65歳前となります。
このように繰り上げ返済の効果は非常に大きいものですが、メリットだけとは限りません。繰り上げ返済を行う際、多くの場合、コツコツ貯めてきた貯蓄を活用します。家計負担を軽減する代わりに、貯蓄を減らすということになるのです。
実際、年金受給前に住宅ローンから解放されたいと、繰り上げ返済に励んだ結果、老後資金を貯めることができずに、年金生活に突入。当然、年金だけで暮らせるわけがなく、生活費を補うために金利の高いローンを利用……そんな顛末を辿る失敗例もみられます。
結婚、そして第一子誕生の年齢があがり、住宅の購入年齢があがっている昨今。ローン返済年齢が70代になるケースは、珍しくありません。そのなかで、繰り上げ返済の目先の効果だけにとらわれることなく、老後資金をいかに確保するか、という視点も考慮することが重要です。